「文在寅(ムン・ジェイン)政権は朴槿恵(パク・クネ)前政権と同じだ」
韓国で日本統治からの解放を祝う「光復節」の15日、ソウルの米国大使館近くで約6千人が米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備に反対するデモを行い、7月28日の北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射直後、文大統領がTHAAD発射台4基の臨時配備を決めたことをこう批判した。
別の場所では、保守団体が反対派を非難、即時配備を訴えた。朴前大統領の弾劾をめぐり、賛成・反対派が互いをののしり合ったデモが再現されたかのようだ。
THAAD配備地の南部、星州(ソンジュ)で今月10日、地元住民らが配備を既成事実化するものだと政府の電磁波調査に抗議し、記者会見と称したデモを開いた。反対派はTHAADのレーダーが出す電磁波が地元特産のマクワウリなどに悪影響を及ぼすと主張してきた。
マクワウリ農家で反対派代表の一人、李鍾煕(イ・ジョンヒ)さん(60)は「文大統領は国民と意思疎通すると言いながら住民と協議せずに配備を決めた」と憤る。「THAAD問題を解決してくれる」と文氏を支持してきただけに「大統領は国民をだました」と語気を強めた。
反対派は配備地の入り口に検問所を設け、警察車両まで検問する無法状態が続いてきた。米軍の資材は、ヘリコプターで運び込むほかなく、北朝鮮の5月の弾道ミサイル発射時には、燃料切れで配備済みの発射台2基とレーダーが運用できない状態に陥ったとされる。
世論調査で7割以上がTHAAD配備に賛成する中でも反対派を勢いづかせているのは、文氏が朴氏弾劾デモから誕生した大統領だと自任し、デモを称賛してきたからに他ならない。反対派は「弾劾デモの訴えの一つがTHAAD反対だったはずだ」と主張する。
◇
「両国関係に冷や水を浴びせた」。中国の王毅外相は6日、マニラで韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相との初会談でTHAAD配備決定をこう批判した。「THAADでICBMを防げるのか。答えは明らかだ。不可能だ」「米国のミサイル防衛に加わることが国益にかなうのか」と一方的にまくし立てた。
中国側はTHAAD配備の報復として韓国への団体旅行を事実上制限。韓国で3〜6月の中国人旅行者が前年同期比6割減り、上半期のサービス収支が過去最悪の赤字になるなど多大な打撃を被っている。それでも、康氏は王氏のペースにのまれ「報復をやめるよう」要請することすらできなかった。
文氏は7月、ベルリンで中国の習近平国家主席と会談し、「北朝鮮の核問題で解決策を見いだせば、結果的にTHAAD問題が解決するのではないか」と語った。本格配備を先延ばしにするうち、対北対話が進展すれば、配備自体必要がなくなると中国側に期待を抱かせる言葉だった。習氏は「前向きな希望表明を高く評価する」と応じた。
文氏は大統領選で「THAAD問題を次期政権に委ねるべきだ」と主張。配備と撤回を曖昧にすることが「外交カード」になると持論を展開した。
だが、大統領就任後、1年以上の配備先送りを意味する環境影響評価の徹底を指示すると、米メディアは「計画停止」だと報じ、トランプ米政権の不信感を呼んだ。6月の米韓首脳会談前には「配備撤回はない」と米側への説明に腐心した。文氏の“曖昧戦略”は米中双方の疑心だけを招く結果を生んだ。
中国の識者の一人は中国紙でこう皮肉った。「文政権がTHAAD問題で見せた極端な行動は、妙技を披露しようとして自分の首を絞めることになる」(星州 桜井紀雄)
http://www.sankei.com/world/news/170818/wor1708180017-n1.html
http://www.sankei.com/images/news/170818/wor1708180017-p1.jpg
文在寅政権にTHAAD配備撤回を求め、スローガンを叫ぶ反対派住民ら=10日、韓国・星州(桜井紀雄撮影)
http://www.sankei.com/images/news/170818/wor1708180017-p2.jpg
韓国THAAD配置をめぐる主な動き
韓国で日本統治からの解放を祝う「光復節」の15日、ソウルの米国大使館近くで約6千人が米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備に反対するデモを行い、7月28日の北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射直後、文大統領がTHAAD発射台4基の臨時配備を決めたことをこう批判した。
別の場所では、保守団体が反対派を非難、即時配備を訴えた。朴前大統領の弾劾をめぐり、賛成・反対派が互いをののしり合ったデモが再現されたかのようだ。
THAAD配備地の南部、星州(ソンジュ)で今月10日、地元住民らが配備を既成事実化するものだと政府の電磁波調査に抗議し、記者会見と称したデモを開いた。反対派はTHAADのレーダーが出す電磁波が地元特産のマクワウリなどに悪影響を及ぼすと主張してきた。
マクワウリ農家で反対派代表の一人、李鍾煕(イ・ジョンヒ)さん(60)は「文大統領は国民と意思疎通すると言いながら住民と協議せずに配備を決めた」と憤る。「THAAD問題を解決してくれる」と文氏を支持してきただけに「大統領は国民をだました」と語気を強めた。
反対派は配備地の入り口に検問所を設け、警察車両まで検問する無法状態が続いてきた。米軍の資材は、ヘリコプターで運び込むほかなく、北朝鮮の5月の弾道ミサイル発射時には、燃料切れで配備済みの発射台2基とレーダーが運用できない状態に陥ったとされる。
世論調査で7割以上がTHAAD配備に賛成する中でも反対派を勢いづかせているのは、文氏が朴氏弾劾デモから誕生した大統領だと自任し、デモを称賛してきたからに他ならない。反対派は「弾劾デモの訴えの一つがTHAAD反対だったはずだ」と主張する。
◇
「両国関係に冷や水を浴びせた」。中国の王毅外相は6日、マニラで韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相との初会談でTHAAD配備決定をこう批判した。「THAADでICBMを防げるのか。答えは明らかだ。不可能だ」「米国のミサイル防衛に加わることが国益にかなうのか」と一方的にまくし立てた。
中国側はTHAAD配備の報復として韓国への団体旅行を事実上制限。韓国で3〜6月の中国人旅行者が前年同期比6割減り、上半期のサービス収支が過去最悪の赤字になるなど多大な打撃を被っている。それでも、康氏は王氏のペースにのまれ「報復をやめるよう」要請することすらできなかった。
文氏は7月、ベルリンで中国の習近平国家主席と会談し、「北朝鮮の核問題で解決策を見いだせば、結果的にTHAAD問題が解決するのではないか」と語った。本格配備を先延ばしにするうち、対北対話が進展すれば、配備自体必要がなくなると中国側に期待を抱かせる言葉だった。習氏は「前向きな希望表明を高く評価する」と応じた。
文氏は大統領選で「THAAD問題を次期政権に委ねるべきだ」と主張。配備と撤回を曖昧にすることが「外交カード」になると持論を展開した。
だが、大統領就任後、1年以上の配備先送りを意味する環境影響評価の徹底を指示すると、米メディアは「計画停止」だと報じ、トランプ米政権の不信感を呼んだ。6月の米韓首脳会談前には「配備撤回はない」と米側への説明に腐心した。文氏の“曖昧戦略”は米中双方の疑心だけを招く結果を生んだ。
中国の識者の一人は中国紙でこう皮肉った。「文政権がTHAAD問題で見せた極端な行動は、妙技を披露しようとして自分の首を絞めることになる」(星州 桜井紀雄)
http://www.sankei.com/world/news/170818/wor1708180017-n1.html
http://www.sankei.com/images/news/170818/wor1708180017-p1.jpg
文在寅政権にTHAAD配備撤回を求め、スローガンを叫ぶ反対派住民ら=10日、韓国・星州(桜井紀雄撮影)
http://www.sankei.com/images/news/170818/wor1708180017-p2.jpg
韓国THAAD配置をめぐる主な動き