8月に入ってから米国と北朝鮮の関係が一段と緊迫化してきた。8日、トランプ米大統領が米国を脅すなら北朝鮮は炎と怒りに直面すると警告した。翌日、米国からの警告への応酬といわんばかりに、北朝鮮の朝鮮中央通信社がグアムへのミサイル攻撃検討を報じた。
北朝鮮を巡る状況は、米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩主席との間でチキンゲーム化している。
足元では米国政府の高官が北朝鮮との対話の可能性に言及するなど、米朝間の緊張感は若干低下した。しかし、これが北朝鮮問題の鎮静化につながるとは考えづらい。本当に米国と北朝鮮が軍事衝突に陥れば、世界は未曽有の混乱に直面する。
そのリスクを米国は冒せない。中国やロシアが北朝鮮を見捨てる展開も考えづらい。北朝鮮の挑発は今後も続き、朝鮮半島をめぐる神経質な状況が続くだろう。
朝鮮半島情勢の不確実性が高まる中、わが国はいかにして自力で国家の安全を確立するかを真剣に考えなければならない。特に、アジア新興国を中心に国際社会との関係を強化することは不可欠だ。それが、北朝鮮の暴走を抑えるよう中国に行動を求める発言力につながるだろう。
止まらない北朝鮮の軍事挑発
北朝鮮は米国からの警告を無視してミサイル発射や核兵器の開発を続けている。中国やロシアも国連が採択した北朝鮮への制裁に賛成した。米国の政府関係者は北朝鮮への譲歩も示しているが、同国が軍事挑発を控え国際世論からの懸念に耳を傾けようとする気配は見られない。
北朝鮮は、脅し続ければ米国が一定の譲歩を示し、米朝の平和条約など自国の体制維持に好ましい条件を確保できると考えている。当面、北朝鮮は国際社会に対してミサイル発射や核兵器開発という“脅し”を突き付け続けるだろう。
北朝鮮が軍事挑発をやめない理由は、ずばり、金独裁政権は米国が北朝鮮を攻撃できないことを理解しているからだ。もし、朝鮮半島で米朝の軍事衝突が勃発すれば韓国とわが国には耐えられないほどの被害が及ぶはずだ。
韓国の首都ソウルは38度線から40キロ程度の距離にある。韓国には、約20万人の在韓米国人もいる。また、在日米軍への被害も想定される。事実上、米国は日韓の意向を無視して軍事行動を起こせない。それゆえ、事態の悪化を回避するためにマティス国防長官とティラーソン国務長官が北朝鮮との協議の可能性に言及した。
また、北朝鮮は、中国とロシアが同国を見放すことができないことを十分に認識している。北朝鮮は中国やロシアの利害を反映して、米国と同盟関係にある韓国と対峙してきた。
朝鮮半島で二つの緩衝国家が対峙することで、米国と中国・ロシアがダイレクトに向き合い安全保障を巡る緊張感を高めるなど、互いにエネルギーを消耗しあう事態が回避された。
足元、中国は北朝鮮の政情不安定感が高まり、難民が中朝国境に押し寄せることを恐れている。それは、習近平国家主席の支配基盤を不安定にしかねない。それゆえ、中国の本心としては、北朝鮮におとなしくしていてほしいはずだ。その弱みに付け込んで、北朝鮮は軍事挑発という脅しを続けてきた。
真の脅威は北朝鮮の核攻撃能力向上
北朝鮮が国際社会に対して脅しを続けている理由には、核攻撃能力の向上に向けた時間稼ぎという側面もあるだろう。口先だけでなく、実際の攻撃力を手にすることが脅しの効果を増幅させるために欠かせない。
北朝鮮が開発しているとみられる大陸間弾道ミサイル(ICBM)には、ウクライナから流出したロケットエンジンが用いられてきたようだ。徐々に北朝鮮は技術の吸収を進め、現在はミサイルエンジンの生産能力を手にしたとみられる。同国が核弾頭の小型化にも成功したとの報道もある。
この結果、北朝鮮が実際に米国本土を核攻撃する能力を身につけることが懸念される。もし、それが現実のものとなれば米国の政府だけでなく国内世論からも北朝鮮が差し迫った脅威であるとの認識が示されるだろう。
その場合、米国が北朝鮮における体制転換や軍事攻撃の可能性などを真剣に検討し、朝鮮半島情勢の緊張感が高まるのは必至だ。こうしたシナリオを考える上で懸念されるのが、米国の大統領であるトランプ氏の言動だ。
http://diamond.jp/articles/-/139371
(>>2以降に続く)
北朝鮮を巡る状況は、米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩主席との間でチキンゲーム化している。
足元では米国政府の高官が北朝鮮との対話の可能性に言及するなど、米朝間の緊張感は若干低下した。しかし、これが北朝鮮問題の鎮静化につながるとは考えづらい。本当に米国と北朝鮮が軍事衝突に陥れば、世界は未曽有の混乱に直面する。
そのリスクを米国は冒せない。中国やロシアが北朝鮮を見捨てる展開も考えづらい。北朝鮮の挑発は今後も続き、朝鮮半島をめぐる神経質な状況が続くだろう。
朝鮮半島情勢の不確実性が高まる中、わが国はいかにして自力で国家の安全を確立するかを真剣に考えなければならない。特に、アジア新興国を中心に国際社会との関係を強化することは不可欠だ。それが、北朝鮮の暴走を抑えるよう中国に行動を求める発言力につながるだろう。
止まらない北朝鮮の軍事挑発
北朝鮮は米国からの警告を無視してミサイル発射や核兵器の開発を続けている。中国やロシアも国連が採択した北朝鮮への制裁に賛成した。米国の政府関係者は北朝鮮への譲歩も示しているが、同国が軍事挑発を控え国際世論からの懸念に耳を傾けようとする気配は見られない。
北朝鮮は、脅し続ければ米国が一定の譲歩を示し、米朝の平和条約など自国の体制維持に好ましい条件を確保できると考えている。当面、北朝鮮は国際社会に対してミサイル発射や核兵器開発という“脅し”を突き付け続けるだろう。
北朝鮮が軍事挑発をやめない理由は、ずばり、金独裁政権は米国が北朝鮮を攻撃できないことを理解しているからだ。もし、朝鮮半島で米朝の軍事衝突が勃発すれば韓国とわが国には耐えられないほどの被害が及ぶはずだ。
韓国の首都ソウルは38度線から40キロ程度の距離にある。韓国には、約20万人の在韓米国人もいる。また、在日米軍への被害も想定される。事実上、米国は日韓の意向を無視して軍事行動を起こせない。それゆえ、事態の悪化を回避するためにマティス国防長官とティラーソン国務長官が北朝鮮との協議の可能性に言及した。
また、北朝鮮は、中国とロシアが同国を見放すことができないことを十分に認識している。北朝鮮は中国やロシアの利害を反映して、米国と同盟関係にある韓国と対峙してきた。
朝鮮半島で二つの緩衝国家が対峙することで、米国と中国・ロシアがダイレクトに向き合い安全保障を巡る緊張感を高めるなど、互いにエネルギーを消耗しあう事態が回避された。
足元、中国は北朝鮮の政情不安定感が高まり、難民が中朝国境に押し寄せることを恐れている。それは、習近平国家主席の支配基盤を不安定にしかねない。それゆえ、中国の本心としては、北朝鮮におとなしくしていてほしいはずだ。その弱みに付け込んで、北朝鮮は軍事挑発という脅しを続けてきた。
真の脅威は北朝鮮の核攻撃能力向上
北朝鮮が国際社会に対して脅しを続けている理由には、核攻撃能力の向上に向けた時間稼ぎという側面もあるだろう。口先だけでなく、実際の攻撃力を手にすることが脅しの効果を増幅させるために欠かせない。
北朝鮮が開発しているとみられる大陸間弾道ミサイル(ICBM)には、ウクライナから流出したロケットエンジンが用いられてきたようだ。徐々に北朝鮮は技術の吸収を進め、現在はミサイルエンジンの生産能力を手にしたとみられる。同国が核弾頭の小型化にも成功したとの報道もある。
この結果、北朝鮮が実際に米国本土を核攻撃する能力を身につけることが懸念される。もし、それが現実のものとなれば米国の政府だけでなく国内世論からも北朝鮮が差し迫った脅威であるとの認識が示されるだろう。
その場合、米国が北朝鮮における体制転換や軍事攻撃の可能性などを真剣に検討し、朝鮮半島情勢の緊張感が高まるのは必至だ。こうしたシナリオを考える上で懸念されるのが、米国の大統領であるトランプ氏の言動だ。
http://diamond.jp/articles/-/139371
(>>2以降に続く)