https://i.imgur.com/8lmvVTX.jpg
「今回の任命拒否問題には、怒り心頭というよりも、学問の自由が脅かされることに強い危機感を持っています。これまで日本学術会議は、政権に対して耳の痛いことを言ってきましたから、“潰したい”という意図があるのだと思います」
こう語るのは、2005年〜2014年までの9年間、日本学術会議の「会員」を務め、現在も「連携会員」である上野千鶴子さん(72)だ。
国内の科学者を代表する機関である日本学術会議が推薦した新会員候補のうち、6人を菅義偉首相が任命しなかった問題が波紋を広げている。10月14日、自由民主党は日本学術会議のあり方を検討するプロジェクトチームの初会合を開催した。問題の核心である任命拒否については議論せず、民営化を含めた組織改革について話し合った。これには「論点ずらし」という声が……。
そもそも日本学術会議とは、政府から独立した「国の特別機関」。行政や国民の生活に科学を反映させる役割を担っていて、会員の任期は6年となっている。だが、推薦方式の改革直後に選ばれた、上野さんを含む20期(2005年〜)のメンバーのみ、例外的に9年の任期を務めている。
「私もジェンダー研究の専門家として、さまざまな提言や報告の取りまとめに関わってきました」
上野さんが関わってきた日本学術会議のジェンダー関連分科会では、選択的夫婦別姓や男女共同参画社会に向けた民法改正、性暴力を防ぐための刑法改正についてなど、2003年から現在までに、さまざまな提言や報告、要望などを19本も発表してきた。
「学者の提言ですから、出典もデータも学術論文並みの精緻さで、ものすごく手間をかけて作成されたものばかりです。しかし、提言や報告がどのように生かされるかは、時の政権次第です」
日本学術会議が出す提言や要望には強制力はない。受け入れるかどうかは政治の選択だ。
「たとえば、学術会議は選択的夫婦別姓を含む民法改正への提言を発出しました。選択的夫婦別姓は、民主党政権で福島瑞穂さんが男女共同参画担当大臣になったときに実現できるのではないかという機運が高まりました。これは法律を変えたら済む話で、予算措置は0円ですから、やる気さえあればすぐにできるんです。しかし、福島さんは普天間基地移設問題で、閣内不一致で政権を離脱しました。結局、今に至るまで選択的夫婦別姓は実現していません」
一方、日本学術会議が行った要望や提言が社会に大きく変える例もある。近年では、たばこ規制に関するものが象徴的な例だという。たとえば2008年3月、職場や公共機関での分煙、たばこの販売方法の規制などを盛り込んだ「脱タバコ社会の実現に向けて」という「要望」を日本学術会議は政府に提出した。「要望」は「政府及び関係機関等に実現を望む意思表示」として「勧告」よりも強い位置づけになっている。
「発がん性リスクや医療費コストなど、さまざまなデータを積み上げて根拠にした完璧な“要望”でした。もちろん、喫煙者の多い政治家側からは抵抗もありましたが、明確なエビデンスで示されれば、文句のつけようもない。日本学術会議が過去に行ってきたもののなかでも、もっとも影響力があったもののひとつでしょう」
日本学術会議の要望は法律や政策に取り入れられ、現在の分煙社会ができあがった。こうして、非喫煙者や未成年者は大きな恩恵を受けたのだ。
続く。
女性自身 記事投稿日:2020/10/21 11:00 最終更新日:2020/10/21 11:00
https://jisin.jp/domestic/1905652/
上野千鶴子
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E9%87%8E%E5%8D%83%E9%B6%B4%E5%AD%90
上野 千鶴子(うえの ちづこ、1948年(昭和23年)7月12日 - )は、日本のフェミニスト、社会学者。専攻は、家族社会学、ジェンダー論、女性学。東京大学名誉教授。
NPO法人ウィメンズアクションネットワーク (WAN) 理事長、日本社会学会理事、元関東社会学会会長(2005年(平成17年度)- 2006年(平成18年度))、※日本学術会議会員、シューレ大学アドバイザー、「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」共同代表を務める。
慰安婦問題の解決をめざす会に所属。etc.
「今回の任命拒否問題には、怒り心頭というよりも、学問の自由が脅かされることに強い危機感を持っています。これまで日本学術会議は、政権に対して耳の痛いことを言ってきましたから、“潰したい”という意図があるのだと思います」
こう語るのは、2005年〜2014年までの9年間、日本学術会議の「会員」を務め、現在も「連携会員」である上野千鶴子さん(72)だ。
国内の科学者を代表する機関である日本学術会議が推薦した新会員候補のうち、6人を菅義偉首相が任命しなかった問題が波紋を広げている。10月14日、自由民主党は日本学術会議のあり方を検討するプロジェクトチームの初会合を開催した。問題の核心である任命拒否については議論せず、民営化を含めた組織改革について話し合った。これには「論点ずらし」という声が……。
そもそも日本学術会議とは、政府から独立した「国の特別機関」。行政や国民の生活に科学を反映させる役割を担っていて、会員の任期は6年となっている。だが、推薦方式の改革直後に選ばれた、上野さんを含む20期(2005年〜)のメンバーのみ、例外的に9年の任期を務めている。
「私もジェンダー研究の専門家として、さまざまな提言や報告の取りまとめに関わってきました」
上野さんが関わってきた日本学術会議のジェンダー関連分科会では、選択的夫婦別姓や男女共同参画社会に向けた民法改正、性暴力を防ぐための刑法改正についてなど、2003年から現在までに、さまざまな提言や報告、要望などを19本も発表してきた。
「学者の提言ですから、出典もデータも学術論文並みの精緻さで、ものすごく手間をかけて作成されたものばかりです。しかし、提言や報告がどのように生かされるかは、時の政権次第です」
日本学術会議が出す提言や要望には強制力はない。受け入れるかどうかは政治の選択だ。
「たとえば、学術会議は選択的夫婦別姓を含む民法改正への提言を発出しました。選択的夫婦別姓は、民主党政権で福島瑞穂さんが男女共同参画担当大臣になったときに実現できるのではないかという機運が高まりました。これは法律を変えたら済む話で、予算措置は0円ですから、やる気さえあればすぐにできるんです。しかし、福島さんは普天間基地移設問題で、閣内不一致で政権を離脱しました。結局、今に至るまで選択的夫婦別姓は実現していません」
一方、日本学術会議が行った要望や提言が社会に大きく変える例もある。近年では、たばこ規制に関するものが象徴的な例だという。たとえば2008年3月、職場や公共機関での分煙、たばこの販売方法の規制などを盛り込んだ「脱タバコ社会の実現に向けて」という「要望」を日本学術会議は政府に提出した。「要望」は「政府及び関係機関等に実現を望む意思表示」として「勧告」よりも強い位置づけになっている。
「発がん性リスクや医療費コストなど、さまざまなデータを積み上げて根拠にした完璧な“要望”でした。もちろん、喫煙者の多い政治家側からは抵抗もありましたが、明確なエビデンスで示されれば、文句のつけようもない。日本学術会議が過去に行ってきたもののなかでも、もっとも影響力があったもののひとつでしょう」
日本学術会議の要望は法律や政策に取り入れられ、現在の分煙社会ができあがった。こうして、非喫煙者や未成年者は大きな恩恵を受けたのだ。
続く。
女性自身 記事投稿日:2020/10/21 11:00 最終更新日:2020/10/21 11:00
https://jisin.jp/domestic/1905652/
上野千鶴子
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E9%87%8E%E5%8D%83%E9%B6%B4%E5%AD%90
上野 千鶴子(うえの ちづこ、1948年(昭和23年)7月12日 - )は、日本のフェミニスト、社会学者。専攻は、家族社会学、ジェンダー論、女性学。東京大学名誉教授。
NPO法人ウィメンズアクションネットワーク (WAN) 理事長、日本社会学会理事、元関東社会学会会長(2005年(平成17年度)- 2006年(平成18年度))、※日本学術会議会員、シューレ大学アドバイザー、「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」共同代表を務める。
慰安婦問題の解決をめざす会に所属。etc.