私の脚はエチゴヤ秋葉原店前にて歩を停めた。
「頑張っているかね」
店員と差し障りのないやり取りを演じつつ、この界隈で常連然として振る舞っていた私の眼は、
かのマルイのガスブロMWSをその陳列棚に見出していた。
真樹日佐夫風にエアガンを語るスレ [無断転載禁止]©2ch.net
私の脚はエチゴヤ秋葉原店前にて歩を停めた。
「頑張っているかね」
店員と差し障りのないやり取りを演じつつ、この界隈で常連然として振る舞っていた私の眼は、
かのマルイのガスブロMWSをその陳列棚に見出していた。
私はしげしげ見入った。業界初の標準セラコート仕上げと謳うだけの事はあり、
かつてのデフォルメの大きいマルイ製品と比べてみてもなるほど、隔世の感もむべなるかな、と素直に感嘆した次第。
「どうです？先生。これを期にガスブロに転向して見ては。幸いこれから気温的にも追い風が吹こうし」
「さて、な。」
と、はぐらかすのをこの手のやり取りの際、私は常としてきたのだが、ややあって
「肝心の作動の方についちゃあ、どうなんだね？」
と口をついて出たのには我ながら苦笑を禁じえなかった。微苦笑、というべきか。
何のことはない、各社に比べやや出遅れた感のあったマルイガスブロM4ではあるものの
その存在価値、最後発にあって如何なる工夫を凝らして世に出たものか。
その辺の興味に心躍らせていたからに他ならない。
ウエスタンアームズ、KSC、海外製…と何するくれなく購入してきてはいたのだ。
特に海外勢のそれ、主に台湾・香港製ではあるがー
そのリアルな外観と裏腹に、全く性能面での不安定さには心底辟易していたのだ。真夏の高温下にあってもフルでの撃ち切りなど夢のまた夢。
もちろんその点の要素も含めての海外製購入、意趣返しにメーカーを批判たらんとしているのでは、と見られるのは心外。この点については諸君も重々承知していよう。
と些か気色ばんでいたであろう私の問いに
「慌てない慌てない。再販に伴ってマルイさん、そっちの方も奮発してくれちゃって」
ニヤリとすると共に店員が出してきたスペアマガジンは何と6本。
聴けば装弾数が30発、と少なく感じない訳ではないが
折に触れ兄の梶原から
「サバゲとはつまり、リアカンであってこそだわな。と思えばほれ、前回のTOPライブカートにしても、だ。」
と折に触れ言われていた事であるし、事実そう言って微笑む泉下の彼の声が聴こえたー
といえば大袈裟に過ぎようか。私は目頭に熱いものを覚えつつ、商品を手に取った。
我が兄、梶原一騎も健在なれば、また私としても右手に倣えで大いにその健啖ぶりを発揮していた時代。
私の運命を変えるある男との出会いを果たすのだ。
「実戦ザバイバルゲーム」「喧嘩サバイバルゲーム」と国内で邪道視され、或いは黙殺されて来た大山倍達その人である。
「直接ヒット制」と世に恐れられたゲームスタイルは波紋を呼び、また違法パワーも辞さない強気なチューンでエアガン界に旋風を巻き起こした巨人である。（のちに袂を別った芦原秀幸なよる【サバゲ】が誕生するのはこれより数年の後である）
私は釣られる形で梶原の話に聞き入っていたが
ややあって
「どうかね？本気でサバイバルゲームを始めるに当たっちゃ師事するに申し分のない相手…」
（なるほど、話は既にして決定済み、か）
私とその大山を引きあわせるべく梶原が骨を折っていた事は察せられるが
かと言って頭から尊敬する申し上げるのは如何なものか。思案に耽ったのも束の間、するうち生来の負けん気があたまを擡げてきて
「いいよ。会おうじやないの。」
「そう来なくっちゃ！」と言下に梶原。
風雲を孕んだ出会いはその年の内に訪れた。
奇しくも「1J規制」が本格化した月でもあった。
我ら3名の会合、言うなれば結盟式が料亭〝千代新〟にて実現するのにさしたる弊害もなく、あれよあれよと事は進んだ。
そしてその翌日にはまんまと入門させられた次第。
当日。索敵を踏まえ慎重に歩を刻む私に、大山がいきなり私の耳にフレンドリーショット。
「君ィ、敵は前とは限らんよ！努努、警戒を解かぬ事だ！」
「マグチェンジの弾ポロもヒット扱いよ！」
…と日頃の人懐っこさが嘘の様に形を潜め
ことゲームに於いては一切妥協しない彼の矜持を垣間見た。
初めのうちこそ戸惑う私だったが、なるほど
実戦サバゲとはこういうものか、とやがて頬を縦に振らざるを得なくなっていた。
梶原一騎についての解説は今さらの感を拭えぬしまた、他著でも繰り返し述べてきた事でもあり
ここでは省くー
但しそのかけがえの無い思い出までも、となるとそれは無理な話で
共に重ねた放蕩三昧の明け暮れは、いま思い出しても褪せぬ輝きを持っている。
「おい、聞いたか。」
「聞いたかって何を？」
「ウエスタンアームズの新製品だよ、ほれ。」
「ーあのバルブ打突をモーターに依って行うー…専用ガス1缶で優に8,000発もの燃費を誇るあの…」
「…ヤティマチックよ！」
梶原が子ども子供して相継いだ。
しかし、その頃の私はと言えばトイテックのキャリコに夢中であり
「ターゲットを狙う？違うねターゲットは（以下略）」
…を地で行かんと闇雲に生き急いでいた。アサヒのM60を片手に傍若無人に振る舞う梶原が
如何なる心境の変化からサブマシンガンに興味を抱くに至ったか。
私としても大変興味深く、紹介記事の乗ったGUN、コンバットマガジンのバックナンバーを漁ったものであった。
と、硬く信奉していた為
この手の新製品には食指が動かなかった、と言えようか。しかし調べるにつれ同製品はマガジンに電池、グリップ内にガス…という斬新な構造に改めて感嘆した次第。
しかし運命の悪戯か、梶原は遂に念願のヤティを手に取る事なく病に斃れるー。
…その溢れんばかりの才覚をして夭折、と言って差し支えない程の呆気ない最期であった。
発売と同時に落手しなかった事を、この時ほど悔いた試しはない。
こんなエピソードがある。
若き日の兄さんの金遣いもこれまた前代未聞の浪費ぶりで
JACのスターリング、FAL、アサヒでいう処のFNC、MGCのペネトネーター、果ては九九式機関銃のカスタム品…と留まる事を知らず
BV式のフルオートガスガンは全て網羅していたのでは、とは太陽模型屋店主の言である。
梶原はそれやこれやの全てをゲームに持ち出しいちいち参加者全員に自慢したのだそうだ。
ガスガン、という響きがまだ新鮮であった頃の逸話である。
全身から野武士もかくや、という威容を発して立っていたー。大山茂。
師の大山から常々聞かされていた事でもあり、こうしてガンスミス・バトンで偶偶行き合わせたのを縁に後々まで
因縁浅からぬ仲となるのだが。
「あんたが真樹さんか。」
「いかにも。茂さんについては館長より聞き及んでいます。」
私は低頭して見せたが奴さん、どうにも面白くなさそうな風情。
（俺と館長の間柄に嫉妬している訳かー）
得心が行くと他人事の様に成り行きを楽しむ、そういった不敵な青春の尻尾がやおら
姿を現した。
忌々しげに茂が言ってのけた。
如何にも「常在戦場」を旨とする上は
いつ何時でもゲームに対応出来るよう、外出時にはシューティンググラスを着けるという習慣が身に付いていた。
況んや梶原の影響である。
「なあに。街中でゴーグルではチト目立とうというもの。TPOを弁えた上での選択なんだがね。」
一寸先は闇、と言うが未来に刺激的な展開が待ち受けている事を私は善しとした。退屈しないで済むばかりか
概ね自らのスキルアップに繋がるからに他ならぬ。
茂にしてもそこは同意と見え
「いずれまた。」
とその日は綺麗に別れた事であった。
（安価で有名な所謂バトンバイオ、を買いにきたものか…）
茂のバトン出没する理由に思いを巡らすうちふと面映ゆさを覚えた私だったが
（否、単なる巡回かも知れぬ。この先にはサイドアームズもある故…）
と思い直すと何やらうそ寒く、襟を正さずには居られなかったというのが正直な感想。
口元に笑みが広がるのを覚えつつ私は蔵前方面に歩き出した。
午後２時の末広町は依然活気に満ちている。
梶原と大山の蜜月が齎した成功例のひとつである。
世界各地に撮影クルーを派遣し、各国微細に異なるエアガン文化をつぶさに取材ー
遊戯銃世界大会に至るまでのドキュメントを追った作品である。
その成果。べらぼうな制作費を回収して余りあるー
空前のヒットを記録した事からご記憶の向きもあろう。
言うまでもなくこれは、梶原が大山の一代記としてその半生を綴った劇画「鯖下バカ一代」より派生した産物である事を付け加えておく。
そして私が請われて主演した「サバゲ大戦争」
…と立て続けにヒット作を世に送り出し
梶原プロは俄かに映画制作会社たらんとする様相を帯びてゆく。
この成功がしかし、利益配分を巡って我等2兄弟と大山を決裂させる要因になろうとはー
けだし運命は皮肉としか言いようがないがー
それは後の項に譲る。
とも取られかねない混同ぶりで多忙を極めた梶原であったがーやがて彼にも斜陽の陰か忍び寄るのだがー
けだし原点たる劇画ブームの火付け役として君臨せしめた事実、その多大な功績は挙げれば枚挙に暇がない。
「ホップのジョー」「巨人の犯人（ホシ）」
に至っては説明の必要もあるまい。しかし盛者必衰は世の慣わし。
本来の劇画原作1本に絞って精進さえしていれば何も問題無かったのでは、と悔やまれてならない。
二足のわらじの体では手掛けた作品群も甚だ画竜点睛を欠こうというもの。
この点、同業者として何より実弟として私も認めざるを得ず、大いに自省を強いられた事であった。
ガンスミス バトンで初対面を果たして以来、会館及び本部道場にて顔を鉢合わせる事も一再ならずあった訳だがー
「孤高のスナイパー」
茂をして人はこう呼ぶ。
鋭い眼光に漏れず、これまたストイックなゲーム展開でその名を天下に響かせたものである。
VSRを２挺持ち込んでフィールドを馳け廻る姿はさながら鬼神の如し、都下のフィールドでその名を知らぬ者はなかった。
1J規制下のゲームに於いて（スナイパーに突出した利点なし）が私の自論。
その静音性等、利点を認めない分けではないが
アサルターの私にとっては実に与し難しー
相性の悪い相手であった事を追記しておく。
その手の研究に於いては余念がなかったと言えよう。
しかし茂が扱うVSRはまるで別物であったー
およそ視界の届かない範囲から気配もなくヘッドショットされるに至っては素直に白旗を挙げる以外に道はなし…。
「一発必中」
（読んで次の如しーか。）
素直にヒットコールを申請する私の潔さに敬意を表してか
茂も私に対する蟠りを幾らか解いた風であった。する内、玉が0.28gである事、不等ピッチの自作バネ～等
秘訣を色々教授されながらも、其れなりに愉しい明け暮れであった。
わたしが指切りセミオートに傾倒していくのも、この頃からである。
前項では触り程度に述べるに抑えたがー
この作品を梶原が世に送り出してから四半世紀。
「メリケンピストルボーイ」なるショップにて
店長たる「長森」が売り上げ及び各種商品を盗難→転売したその一部始終を余す事なく描く衝撃のドキュメントー
…腐敗したエアガン業界の暗部に切り込むといった斬新な趣向は一大ブームを巻き起こし、アニメ化までされたのは記憶に新しいところ。
若い諸兄には馴染みが薄かろうが、是非とも一読して戴きたい良著である。
( ﾟ∀ﾟ)彡 続き！
⊂彡
サイドアームは主にグロックだがー
例えば1番の所有数を誇るいわゆるM4だけで約20挺、これは電動ガスブロを含めた総数だが、うち完動品は15挺といったところかー
「AR系は基本セミ主体」が昔からの私のモットーでありこれは現在とて変わらない。
一方、東側の銃はというとこちらも中々の通を自認しておりAK～SVD～VSS等やはり10挺は越えようかー
但し私がセミオートに拘るのはAR系と、元よりセミオートの設定がなされている銃のみ。
AKの場合はそんな気取った撃ち方はお呼びでなく、心ゆくまでフルで楽しむ。
以上の記述を以て
「真樹氏はセミオートしか撃たないのか」といった一部読者の疑問に対する返答とさせて戴く。
私独りがリアカン＋セミオートに拘るものだから
「先生、前線出るなら多弾持って来て弾幕張って下さいよ！」
「まさかWAM4で1日保たす気ですか？…音で位置バレするし、性能はボーイズ以下だし参ったな…」
などと苦言を呈される事もしばしば。思い起こせば面映い限りだが、
「キミィ、そんな物10挺あってもチューンドの次世代に一瞬で殲滅させられるのが落ちだ！フィールドでは他人の迷惑も考えんとイカン」
…と大山から叱責された事もあり、以降ガスブロ限定戦以外でのWAM4は慎んでいる次第。
その日、注文してまで購入したVFCのガスブロHk417をお披露目に持参したが運の尽き、
便所に行っている隙にそっくり盗まれたものであった。
そればかりか数日後には車からカーナビを一式持っていかれた事も。
「いい加減にしろ」
と私は言いたい。済んだ事であるし、忘れるに吝かでないが…
ちょうどその頃、来日したクリスコスタに梶原が貸し出した私物のトレポンを壊されるという事件も起きており、兄弟して自棄酒を煽った事であった。
私をして「最も好きな銃」をひとつ挙げるとすればー
ズバリ「ドラグノフ」がそれであり、旧ソ連が生んだマークスマンライフルである事は言わずと知れていよう。
彼のアブトマット・カラシニコフを参考にー
内実は別物ながらも、それは近～中距離間の戦闘を目的に製造された物であり、即座に像を結べる独自の×4倍率スコープといい
精密な、というよりは簡易的な狙撃と連射を目的としたセミオートマチックライフルである。
これをまずトイガン化したものがPDIの外部ソース式ガスタイプ。続いてリキッドチャージを実現したG&Pの物も出るのだが、高価な割に作動性が悪く、所詮観賞用の域を出ぬ感は否めず。
決定版と呼べるリアルソード製の電動、及びWEのガスブロが発売されるまでまだ数年を要するのである。
このドラグノフ（以降SVD、と表記を改めるが）との出会いこそが、私をしてこの道に踏み込ませた最大の要因と言っても差し支えあるまい。
私が最初に手にしたトイガンこそマルイのMP5
これはエアーコッキングであったがー
専門誌で初めて目にしたSVDの魅力には何とも抗し難く
何とも妖艶に映った事であった。
やがて10数年の時を経て果たした運命の邂逅ー
トイガンSVDの最高峰たるリアルソード製を我が手にするのである。
独自規格のタペットプレートや4枚ギア、ピストンなど専用品が数多く使われており
巷に流通するパーツ類の転用があまり利かないのには閉口したが、僅かな手直しで活きる素性の良さには
（これがマルイコピー海外製とは）
と舌を巻いたものであった。
※真樹日佐夫著「エアガン無頼」シリーズに於いては幸いにも順調に版を重ね、この度
加筆～修正を加え文庫化も成された為、一層読み易くなった次第。未読の方は是非、書店にて手に取って頂きたい。
《すてごろ押し問答！マッキーに聴け》
はお陰様で20周年を迎えるに至る長寿コーナーとなった訳だが
これはもう、一重に読者のお陰という他なく
これからも要望のある限り全力で傾注する所存である。
同コラムに馴染みのない層に向けて説明させて頂くと、誌面を通じて質問を公募。
（エアガンを始めとする悩める青少年の様々な疑問に私が回答する）といった趣旨のもので
電動ガンの手入れ、チューンナップからそれこそ恋愛相談まで幅広く受け応えする、というスタイルが若者に支持された次第。
中には何を思ってか、いきなりＡ&Ｋミニミを
送って寄越し「修理して欲しい」
などと言い出す輩まで登場する始末。
当コーナーはあくまで「相談」であり、電動ガン修理の依頼は私のオフィスがある当マキビルまで。
この辺は遵守して欲しい。
について語らねばなるまい。
世界エアガンヘビー級チャンピオンとプロレス空気銃王。
この俄かに信じ難い夢のカードが実現するまでに、会場、双方のギャラ、ルール等…クリアせねばならぬ問題が山の如し、で
何より骨を折ったのが「イノキは日本人らしく自衛隊の銃を使え。私はもちろんマルイM14で行く」という身勝手なアリ側の主張であった。
程なくしてプロデューサー梶原の圧力により同マルイから八九式がリリースされ、何とか事なきを得たのだがー
結果はご存知の通り。15ラウンド、フルの死闘にも関わらず互いにヒットがなく
凡戦の末ドロー決着。大いに不満の残る結末となったが
しかし客を入れた形での真剣勝負とはそういうものでこの試合に限っては一切八百長など無かった、と実行委員として備に進行役を兼ねて来た私が断言する。
「ウイリーウイリアムス対アントニオ猪木」
が組まれる運びとなるのだが
※ウイリーとは、茂の一番弟子にて熊からヒットを取ったとされるーこの模様は映画「地上最強のSABAGEパート2」収録
…が満を記して猪木に挑戦状を叩きつけたものである。
果たして双方弾数制限なし、エアコキ戦というアリ戦に次ぐデスマッチとなったのだが
リング下もまた極限の緊張下にあったものだ。
茂としては寝耳に水の仕打ちであり、
彼としては大山鯖下の強さを示さんと名乗りを挙げたに過ぎずー
さりとて大山としても「鯖下の如きはこれを見世物として切り売りするなど言語道断」
という姿勢を崩さず、双方平行線のまま
試合当日を迎えてしまった、という次第。
私としても茂の片棒を担いだ感は否めず、後ろめたい気持ちもあったが
我等同門たるウイリーに絶対の信頼を寄せていたからこそ、強行するにしくはなしー
ままよ、と運命に身を任せたのだがー
「茂ともども抹殺せよ」
…と誠に物騒極まる不気味な指令が世界遊戯銃連盟 極真会館上層部からもたらされていたのである。
これは映画の利益配分を巡っての大山・梶原の対立が尾を曳いており、解決せぬまま来ている事も無関係ではないのでは、と思われた。
果たして両コーナーに陣取った双方セコンド陣は一触即発、レーザーポインター持ち込み禁止にも関わらず
私の顔にポイントが当てられたり、梶原の外部ホースが斬られたり、と一瞬の油断さえも儘ならぬ空間。
途中、猪木がブラインドファイアした、とウイリーが暴言を吐くなど
あわや大乱闘…という窮地を何度も脱し、最終的には事なきを得たのだかー
この日を境に大山、梶原と私の2兄弟は絶縁を余儀なくされる。
それは古き良き落日のー寂寥極まる終焉であった。
立て逃げか？www
評価するよオレは
この男、無類のエアコキ好きときて昨今の電動ガンなどには目もくれない変わり者ー。
しかしそんな唯一の友を私は心より信頼していた。互いに小学生の時分からマルイ\1900シリーズのハンドガンで撃ち合う明け暮れを共にしており謂わば盟友、況や梶原とも面識がある。
時は流れ互いに歳を重ねても私達の繋がりが途切れる事はなかった。彼が伊豆に居を構えてのちすぐ顔を出したのは無論、毎年夏になると決まって鞄にマルイ・スパス12とシェルを×10、BB弾1袋のみを突っ込み伊豆行きと洒落込むーそんな習慣が身についていた。
「なあに、毎度の事さ。そこはそれ…」
挨拶もそこそこに私は旅装を解き、愛銃スパスを取り出した。シェルに結局29発しか装填出来ない事に苦笑しつつ弾を込めているとー。
血相を変えた友人が部屋に飛び込んで来た。奥の間は凝った構えであり、母屋とは離れた場所に建って居たのだ。よほど慌てていると見え
「おいおい、奇襲かね？室内ではやらんよ。」
…と混ぜっ返す私を制し「いま電話があったんだが、アームズマガジン編集部とか何とか。
えらく緊迫した様子でね、すぐに電話口に出てくれとの事。」
「いったい何だというのだ？」
私は解せかねる思いで友人に礼を言い電話を取り次いで貰った。
「何かあったかね？」
依頼されているコラムの原稿、新製品のレビュー等に於いては既に校正を終えている。
「実はそのー。申し上げ難いのですが。ー大阪のあるサバゲチームからクレームが入ったんです！」
「大阪の？はて。」
大阪にはファーストという一大勢力の店が根を張っており系列チームもいくつか存在する。
過去何年にも渡り取材の対象とした事であるし、彼等とも面識があった。
「…とにかく真樹を出せ。の一点張りでしてね。こちらとしてもどう対処したものか、困り果てましてー。今朝から何十回となく掛かってくるんですから。」
「OK。すぐに取って返すからその旨先方に伝えてくれ給え。昼までには間に合っていよう。」
到着して早々に蜻蛉返りとは我ながら滑稽に過ぎようが、緊急事態とあっては仕方あるまい。心配そうに佇む旅館の主人ー友には敢えて事のあらましを伏せたものである。余計な気を遣わせない為である事は言うまでもない。
「どうかね？あれから。」
「ええ、それが…」
ほとほと困り果てた編集者の表情は一様に暗い。
「どうやら先月号の特別企画、あれがマズかったようで…」
「ほう。」
件の企画とはわたしが原作を読ん務めた所謂サバゲマンガであるがー。主人公の女子高生が挑戦状を叩きつけられた大阪のとあるチームを遠征の果てに殲滅する、という趣旨の物で
連載1回目からそこそこの評判を得ている、との事だった。
「どうも主人公が蹴散らしたチーム名、これがイカンかった様でしてハイ」
しきりに汗を拭く編集者の説明にようやく得心がいった事であった。
これが実在し、迷惑を掛けたというのであれば責任の一旦はこちらにあろう。
「そういうならば仕方あるまい。私から詫びてみよう。」
受話器を取り掛けると編集者
「それが先方さん、一両日中に真樹さんに直接大阪まで出向いて来いとの事でして…。」
そも、であるからして私をわざわざ呼び戻したのであろう。私も肚を決めざるを得なかった。
「…そうなろう、な。どれ、明日と言わずこれから向かうとしよう。誤解を解くなら早いに越した事はないし。」
奇しくも早朝の伊豆行きが一転、行脚はこの日の内に大阪にまで及ぶ事になるのである。
梅雨が明け、蒼天の突き抜ける盛夏の昼下がりであった。
果たしてホームで待っていたのは大山であり、これには驚かされた。
「館長、いかがされましたか。」
「真樹さん水臭いじゃないかね。どうやら揉め事らしいが、何故打ち明けてくれなかったか。」
この頃未だ私と大山の蜜月は続いており、今回の件を心配してくれたばかりか、あまつさえ同行するべく先回りして待ってくれていたのであった。
（編集者が口を滑らせたかー）
…大山の好意は無論嬉しかったが、私事の不祥事で師に面倒はかけられまいー
ひたすら低頭して申し出を固辞したのは言うまでもない。
大山に見送られる形で私は車上の人となった。
約束の6時に先立って到着した私は
件のクレーム主と相対していた。
「原因はよ、あんたが連載中の漫画でウチらのチーム潰してくれた事よ。」
「わかっています。であればこそ誠意を見せる為にもこうして遥々謝罪に伺いました。2度とこの様な事のない様に注意に注意を重ねて参ります故今回の事はお目溢し願えませんかー。」
「世の中には詫びて済む事と済まん事、あるん違いますか。イメージダウンも甚だしい、お陰でウチら笑いモンでっせ？」
話は平行線を辿るばかり。埒の明かぬ押し問答を避け私は単刀直入に切り込んだ。
「それがどないしたん。」
男は幾らか気色ばんだ。名は伏せるがー。
このエアガンショップの店長でありかつ、独自のチームで活動していた。
「真剣に楽しむ、それは結構。しかしあくまでもサバゲとは鬼ごっこや隠れん坊の範疇。紳士協定がどうの、などと気取るつもりはないがー。」
「………。」
「おたくは少々評判が悪いようだ。他所のチームを2ちゃんで貶したり定例会で暴言を吐いたり。潰されたのが漫画の上での話で良かったと思わんかね？」
怪我の巧妙か苦し紛れの詭弁かー。がしかし、私の起死回生の一撃が意外な程に響いた様であった。
事実、彼と彼が率いるチームは内紛が絶えず、
今回のアームズマガジン連載の件とは関係なく
事実上破綻していたのである。
そう呟き男は落胆した。張り詰めていた気が切れたのであろう。
そうなると私もどこか居心地が悪くなり
「今回の件は来月号で謝罪文を掲載します。偶然の一致とはいえ不可抗力では済まされない故…」慌てる私を遮り
「もうええんですわ…。店も今月で畳みますんでね。」
趣味で始めたガンショップも経営が立ち行かず、せめて気晴らしにと手を出したサバゲでも居場所がないー。思うだに哀れな男であった。
「どうかね。東京に来てみては。エアガンがすき、それはお互い様、これも何かの縁だ。」
「え？」
…私に迷いは無かった。
それから数週間して私の道場に1人の男が訪れる。奇しくも大山より弁託された支部道場開設の初日。
彼が私の第1号の内弟子である。
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上手いな。共著といこうじゃないの。
というのも私は男の瞋恚を測りかねていた。
なにやら頭の体操を強いられている感じがしないわけでもなかった。
そしやこの男は10年前にも武道板スレに跋扈していたのではないか・・
ならば符丁にも似た言葉をかけてみればみるのも一興かも。
梶原と戯れた悪戯小僧時代に還った心持で
「真樹日佐夫★人生劇場 参上」
と、じきに高声をはじけさせた。
否、戸惑っていたとすら言えよう。
悪戯に今日の混乱を招いたのは恥ずべき私の不覚ではあるが、
私の文体及び背景を知る者がよもや実在しようとは…
「男たる者、空手と遊戯銃の二足の草鞋こそ必然。何の不都合があるかね」
そう言って笑う大山の声が聞こえたー
と云うのはいささか作為的に過ぎようか。
この様な既視感に襲われるのも無理はない。
今年も各地で好評を奏した所謂私の「真樹節」
であるがー
男の誤謬力は明らかに私のそれを上回っており
ならば共著を呼びかけてみるのも一興…
さりとて私の方もやられっ放しでいられる道理もなく、やがて生来の負けん気が首をもたげてきた。これまで参考にしてきた「大山倍達との日々」「極真空手27人の侍」
に加えて新たに「すてごろ懺悔」「ああ五十年、身に余る」を買い足した次第。
ご存知の如く一時は福袋専用銃などと有難くない浮名で本業界に蔓延る電動ガンである。
しかし、安価ながら良い意味で期待を裏切る中々の性能であり、箱出しで20ｍ先のマンタゲーゲットにたやすくヒットした時には些か驚愕させられた次第である。
当方道場でも入門希望者にはCYMAを貸し与え基礎を学ばさせている
ここは回り兄弟の柳川次郎氏が登場すべき場面であり
それが叶わぬとは甚だ遺憾としか言いようがない
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