東京裁判〈上〉 (中公文庫)
児島 襄 (著)
http://www.amazon.co.jp/dp/4122048370

P127
 東郷元外相の口供書は陸、海軍、また木戸右大臣にたいしても激しい言葉で“挑戦”していた。
     (中略)
 そして、口供書は終戦時の努力にもふれたあと、次のような言葉で結ばれている。
「1941年に戦争を阻止し得なかったことは余の生涯に於ける大なる痛恨事であったが、1945年之を終結に導き人類の苦悩を軽減
することに寄与し得たことは、以って聊か慰めと為す次第である」
 この口供書は、木戸口供書とならんで軍人被告たちの反感を呼んだ。いや、文官被告たちの間でも、あまりに自分の立場だけを
主張している、と不評を招いた。陸軍中将でもある鈴木元企画院総裁は「自己ノ責任ヲ他人ニ転化スルノ心事、実ニ劣等ナリ。
彼ハ元来、朝鮮人ノ帰化人ノ種トテ……」と、いささか人身攻撃的口調の論評を日誌に記述した。