ここから現在の野生タブンネの話。
100%タブンネはこの世から消えたかと聞かれればそうですとは言えない。
野生にはわずかだが残存しているのも確か。
ここは牧場の裏手にある小さな山の廃屋。
中には二匹のタブンネと命の消えかけたベビンネがいた。
薄汚れた傷だらけの♂ンネ
つがいであろう♀ンネも傷だらけで片足が無くなっており、痩せてしぼんだ乳をさらし仰向けのままだ。
その下腹部は垂れ流しの尿や糞で炎症を起こす程悪化している。
枯れた草に寝かされたガリガリのベビは二、三度苦しそうに呼吸をするとそのまま息絶えた。
「ミック…ミギィ…ミィのベビ…」
♀は必死に這うように我が子へ向かうと、まるでナメクジが這ったように糞尿の跡が残った。
「ミィ…ミィもあそこに行ってみるミィよ」
♂の言うその場所は牧場。あそこに タブンネ がいることを知っている。
だが隠れるよう細々生きてきた彼らは現状を知らない。あそこにいるのは同族ではない別の生物になってしまっていることも。
人間の管理する土地は昔からタブンネにとっては死地に等しい。
今のタブンネ達にとっては昔以上に警戒されるのだ。しかし財宝がある場所にはかわりないのも事実。
♂は夜が明けたら牧場へむかうことを決意した。