しかし、米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備に対する中国の報復で訪韓中国人客が激減する中、増加率は鈍化傾向にあり、訪韓客も5、6月と2カ月連続で100万人を下回るという状況だ。
それでも一部韓国メディアによると、夏休みで日本や東南アジアなどへの短距離の航空需要が伸びる傾向にあり、当分は航空交通量が増えると見込まれると、韓国国土交通部は楽観的なのだ。
中国路線需要減で一部空港に影響
韓国国土交通部は7月26日、今年1〜6月の上半期に韓国の航空路を利用した航空機(航空交通量)は37万3690便で、前年同期比4.9%増加したと発表した。聯合ニュース(日本語電子版)など複数の韓国メディアが報じている。
1〜6月としては8年連続で過去最高を更新し、1日平均2065便となったという。
報道では、韓国の空港を利用して国際区間を運航した航空機は前年同期比5・6%増の22万6428便、韓国の空港を利用しない国際区間の運航は1.6%増の2万3501便だった。国内区間を運航したのは4.4%増の12万3761便と集計されたという。
しかし、韓国紙、中央日報(日本語電子版)によれば、上半期の航空交通量増加率は2009年の世界金融危機以降初めて5%割れとなったとしている。過去10年間の上半期の航空交通量は世界金融危機による一時的減少(4.8%減)を除き、年平均約5.5%増加していた。
主要空港別では、仁川(インチョン)国際空港が17万6000機と昨年同期より6.4%(日平均916機→975機)増だったが、済州(チェジュ)空港は中国路線の需要減少の影響で8万6000機に止まり、0.8%減(日平均479機→475機)だった。
航空交通量増加率の鈍化傾向は否定できず、やはりTHAAD問題の影響を引きずっているのである。
欧米からの訪韓心理も冷え込む
さらに、中央日報によれば、韓国を訪問した外国人観光客が5月に続き、6月も100万人に達しなかったことが分かったという。2カ月連続の100人割れとなった。
韓国観光公社が7月24日に公表した「6月の韓国観光統計」によると、6月に訪韓した外国人観光客は99万1802人と、前年同月(155万4413人)に比べ36.2%減少した。また、今年5月の外国人観光客数も97万7889人で前年同月比34.5%減だったという。
国別では中国人客の減少幅が大きく、6月は25万4930人と、前年同月(75万8534人)比66.4%減少していた。THAAD問題に加えて、北朝鮮の核問題に関連する報道が続く中、訪韓心理が冷え込み、米国と欧州からの観光客も減少が続いたとみられる。
交通当局は相変わらず強気
こうした悲観的なデータが並んでも、韓国の交通当局は楽観的な見方をしているようだ。
韓国国土交通部の関係者は聯合ニュースの取材に対し、「中国との関係など国際情勢に絡むリスクはあるが、夏休みが始まり日本や東南アジア方面への短距離の航空需要が伸びる傾向にあり、当分は航空交通量が増えると見込まれる」と述べている。
同部は、韓国人の海外旅行の増加、日本や東南アジアなど短距離需要の伸び、格安航空会社(LCC)の旅客輸送力拡大などにより、年間の航空交通量が75万便を超えると見込んでいる。
また、中央日報の取材に国土部航空管制課のキム・サンス課長は「周辺国との持続的な協議による航空路改善、管制手続きの改善などを通して安全でかつ効率的に航空交通の流れを管理していきたい」と、前向きだ。
http://www.sankei.com/west/news/170802/wst1708020030-n1.html
http://www.sankei.com/images/news/170802/wst1708020030-p1.jpg
アシアナ航空が関空ー仁川便に導入したA350−900型機。ただ、THAAD禍で韓国の航空交通量増加率は鈍化傾向だという=関西国際空港