EEタイムズジャパン:キオスクシアの未来を考える

https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/spv/2310/06/news034.html


IPO? 米国資本傘下? キオキシアの未来を考える。 (2023年10月5日記事)

<小山聡の業界スコープ70回>

入りながら:世界の半導体市場はメモリー半導体の予想以上の低迷が主な原因で深刻なマイナス成長が1年以上も続いている。 今回はメモリーチップメーカーの中で唯一の日系企業であるキオスクシアの今後の展望について考えてみたい。

世界の半導体市場はメモリー半導体の予想以上の低迷が主な原因で、深刻なマイナス成長が続き、1年以上続いている。 DRAMもNANDも2023年4~6月の沈滞が特に激しかった。 2023年7~9月には最下位を抜け出したようだが、いずれも回復力が弱く、各メモリーチップメーカーに厳しい市況が続いているのが現実だ。 ここで気になるのが唯一の日系企業であるキオスクシアの状況だ。 親会社東芝から分社した後、IPOの機会が過去に3回ほどあったが、いずれも延期された。 最近はWDCとの統合説まで聞こえてきている。 今回は、キオスクシアの今後の展望について取り上げたい。

厳しい市況が続くDRAMとNAND市場

キオスクシアの話に入る前にメモリー半導体市場の現実についてまとめておこう。 世界半導体市場統計(WSTS)によると、2022年の世界メモリー半導体市場は1298億ドル、このうちDRAMは778億ドル(メモリー全体の60%)、NANDは471億ドル(同36%)、つまりこの2つでメモリー市場の96%を占めている。 DRAM市場を牽引しているメーカーは三星電子、SKハイニックス、マイクロンの3社で、DRAM市場の約95%を寡占している。 一方、NAND市場はDRAMの主要3社にキオスクシアとWDCを加えた5社が率いており、この5社が市場の約95%を占めている。

DRAMもNANDも主要アプリケーションはパソコン、スマートフォン、データセンターであり、主要顧客会社も非常に似ている。 現時点ではパソコンもスマートフォンも需要が落ち込み、データセンター向けの投資も減少している。 そのため、DRAMとNANDはいずれも厳しい市況が続いているのだ。

下表は、キオスクシアの四半期の売上と利益を示している。 これを見ても分かるように、同社は四半期ごとに1000億円を上回る赤字を記録するのが現実だ。 2023年11月には会計年度基準で2024年第2四半期(2023年7~9月)の決算実績が発表される予定だが、第1四半期(2023年4~6月)より小幅に改善する程度と推定される。

DRAMもNANDも好況と不況の波が大きく、いわゆる半導体サイクルを形成しやすいと知られている。 「今は不況でも2年後の2025年には好況が来るだろう。 だから、それまで持ちこたえればいい」という見方もある。 しかし、「回復するのはDRAMだけで、NANDの回復は期待できない。」との見方も存在する。 この見解は、キオスクシアに生死がかかった問題に発展する可能性があるため、もう少し掘り下げて分析してみよう。