生暖かくも最早懐かしいそれに、横腹から背筋、耳元にかけてゾクゾクとしたものがこみ上がってくるのを春田は感じていた。


「…ま、き……っ…」


制止の為なのか意味もなく名前を呼んでみたものの、自分じゃないみたいな掠れた声に情けなくなる。


男同士でキスしてるのに不思議と嫌悪感はない。寧ろ恐ろしい事に自制が利かなくなりそうな位気持ちが良い。


牧から逃げているのか、追いかけているのか次第に判らなくなる。


互いの唾液が混ざるその味は驚く程に甘くて、春田が我を忘れかけたその瞬間、牧は自分から離れていってしまった。


少しだけ呼吸を乱した牧にそっと頬へと手を添えられる。指の震えや涙はもう止まっていた。


「春田さん…」


先程まで触れ合っていた唇がすぐそこにある。


その距離をもどかしく感じている事に気付き春田は驚愕していた。


「今のは春田さんが悪いよ…この状況で他の男の話はしないで」


牧の綺麗な二重が忌々しげに歪む。


「今日…病院で、席を外してくれって言われた時、凄くショックだった」


思い起こせばあの時と状況はほぼ一緒だ。