では、日本国内で美術制作活動だけで食べていける人とはどういう人で、食べられないが続けている人はどういう人なのか。
私が30年ほど見てきた感じだけで言うと、だいたい以下のようになる(もちろんここに入らないケースもあることをお断りします)。

1. 制作だけで食べていける人

1) 国内外の複数の有名ギャラリーが取扱い、国際展に何度か招待され、美術館で個展が開催され、オークションでも人気が
あり、業界内外に名前が知れ渡っている(主に現代アート)。たぶん美術を志す人の一万人に一人くらい。
2) 制作と生業が幸運にも一致している。必ずしも知名度があるとは限らない(イラストレーターなど)。
3) 団体展の会員で、国内の画商が取扱い、国内の富裕層や政治家に顧客が多い。知名度はまちまち(洋画、日本画など)。

2. 制作だけでは食べていけない人
1) 国内外の企画展*1の出品歴をもち、有名ギャラリーで個展を開き、国内の業界では大抵の人に名前を知られている。大学の
先生になることが多いが、他に職業をもっている場合もある。日本全体だと80人前後くらいだろうか。
2) 主に国内の企画展の出品歴をもち、そこそこのギャラリーで個展を開き、業界の一部あるいはローカルでは名前を知られてい
る。大学の先生、及び講師業が多い。東京以外の大都市だとそれぞれ20人くらいはいると思われる。
3) 団体展などに出品しつつ、たまに個展を開き、ごく一部で名前を知られている。学校の教員他、講師業が多い。たぶん全体の中
で一番人数が多いと思われる。
4) レンタルギャラリーや市民ギャラリーなどを借りて個展やグループ展を開き、ほぼ無名。職業はさまざま。