榊というキャラは、ぼくは意外とダメなんだよね。ぼくはああいう頑固な職人とか権威を振りがさすオヤジは大嫌いだから。
依存症の若い人はああいう人に群がるでしょう。ぼくは、ああいうキャラクターはむしろ茶化したかった。
榊は人格者だとみんなに思われている。ぼくはそれは嘘だと思う。
ただのガキみたいなワガママな爺さんだと。技術者とか職人が歳をとって、ある種の境地に達するとか、
人格者になるというのは嘘だと。

伊藤(和典)君は「遊馬は野明がいなければ何も出来ないヤツじゃん」と言っていたけれど、
ぼくに言わせれば伊藤君そのものですよ。理屈先行で最後は他人に下駄を預けてしまう。
そういう意味では、香貫花とか遊馬には特別な感情がありましたね。

山崎なんて今回名前忘れていたからね。「あー、ひろみだっけ」とかね。

多少思い入れがあるとすれば、太田だね。直情バカというか分かりやすい男は好きなんですよ。
太田はあのまま、「撃ちたい、撃ちたい」だけで描いて行くとエンターテイメント的には絵になるでしょう。

実は企画上は、本筋ではないと思われる話が本筋だったはずなんですよ。
でも98式イングラムに人気が集まったり、後藤など一部のキャラクターの人気が上がったり。
企画当初とは変わった部分がでてきた。今回の実写版ではそこを原点に戻したかったんです。
そしてアニメでは難しい人間描写をちゃんとやりたかった。

例えばアニメ版の太田は正義感の強い暴力警官だけど、実写版ではそれだけだとキャラクターとして成立しにくい。
実写版の大田原みたいに“アル中”という側面を持たせることで暴力警官の設定に合点がいく。
アニメの進士幹泰は恐妻家で家庭人だったけれど、実写での御酒屋慎司は女房に逃げられている。
平たく言うと、実写版はアニメ版よりもっと大人っぽくしたかった。遊馬と野明の関係にしてもね、改めて観るとぬるいんですよ。

アニメファンって基本的に、男と女の関係にしても“それっぽい雰囲気”が好きで、
実際に恋愛に突入すると途端に嫌がる傾向があるんです。生々しいものが嫌だっていうのが
アニメーションの特性なわけで。でも警察という組織の中で、はみ出した連中の話となるとやっぱりどこかで
生々しくて毒っぽいものがないと、大人が見て面白いものにならない。