松江:でも逆に言えば、僕は、ブーメランのように
自分に返ってこないものを作っちゃいけないと思うんです。
確かに、毎回そうするのはつらいかもしれない。
でも、ものづくりって、やっぱり全部ブーメランなんですよ。
特にドキュメンタリーは、ブーメランにならないほうがおかしいし、
ブーメランの要素がないと面白くない。

――そもそも、ものづくりというのは自分にブーメランのように
返ってくるものであるべきだ、と。

松江:ものづくりをしている以上、安全地帯を守るっていうのは、
本当は恥ずかしいことなんです。でも、それを恥ずかしいことだと
思わない人も最近は増えてしまっている感じがします。

――それはなぜなんでしょうか?

松江:この社会全体が、新しく何かに挑戦する人や、
勇気を持って告発をする人の足を引っ張るのが得意な社会に
なっちゃってるんですよね。完璧な人間なんているはずないのに、
メディアに出る人間に対して「正しさ」を求めすぎています。
もっと大事なことをやろうとしてるはずなのに、その人のさまつな部分を
糾弾するという、すごく嫌な社会になっているように感じます。
一方で、権力者の嘘には目をつぶろうとするという状況が息苦しいです。