スイミーを読んだ少女や、ゆりが何か違うのは、
虐待を受けても親とつながりたいという、ひたむきな気持ちが心を打つからだと思う。

「あんな目にあってるのに・・・親に」
「そうだよなぁ。他人の心配なんかしてる場合じゃねえよなぁ」
「生まなきゃよかったって言われて育つとさ、ああはならないよね」
「うん・・・、普通はなぁ・・・」
「人に優しくなんかなれねえんだよ」

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親からの虐待を受けて施設に収容され、そこから学校に通っている子どもたちの取材に行ったときのことです。
ちょうどランドセルを背負って帰ってきた女の子に「今、何の勉強してんの?」と話しかけたら、
国語の教科書を取り出して、僕たちの前でいきなりレオ・レオニの『スイミー』を読みはじめたんですね。
施設の職員の人たちが「皆さん忙しいんだからやめなさい」って言うのも聞かず、最後まで読み通したんです。僕たちがみんなで拍手したら僕たちがみんなで拍手したら、すごく嬉しそうに笑ったので、
「ああ、この子はきっと、離れて暮らしている親に聞かせたいんじゃないか」と思いました。

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最初は「ごめんなさい、ごめんなさい」しか震えて言えず、万引きで役に立たないと言われたゆりが、、
止められても役に立とうと不器用な万引きをする。
翔太はそこにゆりを置いて逃げるのが普通と思うが、替わりに身代わりになる。

お金が目当てつながる犯罪家族で、ゆりがつながるにはメンバーのような生き様になるしかない。
本当の親を探せるよう翔太に車を教える信代。父さんじゃなく、叔父さんに戻るという治。

治に亜紀が「普通はお金でつながっているよね」との言葉に「心で繋がっているんだ」と答えあるが、
治は万引きを教えるので「他に教えることが何もないから」と言うが、翔太とゆりは家族から「盗んだのは、絆でした」なのだろう。
ゆりは夜逃げの時に、絆の象徴のような「ビー玉の海」の入れ物を抱きしめて、この家族の宝を持ち出したんだな。

絆を求めるゆりの気持ちがヤバいほど泣きそうになる映画でした。