>>631
 同じドイツへの移住者の中に、ユダヤ系ハンガリー人のアダム・フィッシャー(69)がいる。ハンガリー国立歌劇場の音楽総監督だったが、右派政権に抗って職を辞した。
その彼をドイツが招き、フィッシャーはデュッセルドルフ交響楽団の指揮者に就任した。
アダム・フィッシャーの指揮で聴く演奏には、本当にこれが同じ楽団なのかと思ったほど心を揺さぶられた。はにかみながら語る仕草とは対照的なその指揮の熱さ、
心の琴線に触れる旋律に涙しながら、拍手し続けた。
招請を受けた彼は、この楽団で指揮する条件として、年に一度「人権コンサート」を開くことを要望した。チケットの売上げはチャリティとして、人権活動をしている人たちや団体に贈られる。
3月22日のチケットも完売だった。
 この演奏会では、人権に携わる人の表彰も行われる。今年は、投資家で、慈善事業家で、ユダヤ系ハンガリー人のジョージ・ソロスが受賞者だった。
彼は、米国の大金持ちのトップを走り続けてきた人でもあり、一方、多くの教育事業に寄付してきた人でもある。
彼への評価はさまざまだが、かつて日本を訪れたとき、靖国神社の遊就館を見て「侵略戦争を正当化している」と断じ、
「もし多くの日本の人々が近隣諸国の人々と大きく異なる歴史観を持つようになったら、その違いが将来深刻な問題を生み出すだろう」と語ったことでも有名だ。
アダム・フッシャーはこの日の演奏会で、「ソロスも私も同じような移住者だが、自分の方が少しだけいい職につけた」と、チャーミングなジョークを飛ばした。
「すべての人々は移住者(外国人)である。」
この言葉は、ドイツの排外主義集団であるペギーダとの闘いの現場でよく見かけるコメントだ。
人間は皆、移住者なのだ。
https://websekai.iwanami.co.jp/posts/522