>>37
原典版派の金科玉条である「遺贈稿」について
その実態を《第四》を例に述べてみよう。

ハースは、「遺贈稿」を使いながら、トリオでは
最初「遺贈稿」(Fl.とKl.がメロディー)で印刷して
いたにもかかわらず、後に別の自筆稿を発見して
それに変えた(Ob.とKl.がメロディー)。
なぜ、後世のためであるはずの「遺贈稿」を
変えてしまったのか?実際のところ「遺贈稿」では
もともとOb.とKl.がメロディーを吹くようになっていた。

ノーヴァクは、「遺贈稿」を使わず、ニューヨーク筆写譜
を採用した。なぜ、後世のためであるはずの「遺贈稿」
を使わなかったのか?
要するに、両原典版とも「遺贈稿」通りではないのだ。

また、自筆譜の56分20秒のところで、ブルックナーは
自筆譜12小節を斜線で消し、その最初の4小節を12小節に
拡大した他人の筆写譜をそこへ追加挿入している。
これは純然たる自筆譜ではないのだ。

さらには、351小節から430小節まで削除するように
青い鉛筆でマークが入れられている。これは初版の
第1主題のカットどころではないのだ。もし、後世の
ために残したものなら、こんなカット指示など消し去る
べきであった。