>>619
おじいさん。それは違います。貴方は演奏技術だけをどうこういっておられるのかもしれませんが、
ブルックナーの精神は我々凡人には分かるものではありません。
しかしワイケルトの指揮は一見平凡に見えて、
実は素朴で前に出ることを嫌ったブルックナーの使徒の様な性格を熟知した上で、
微に入り、細に入り綿密に曲のテクスチャーを分析しつつ、フォルテシモでも音楽が飽和しない様な節度がありました。
ブルックナーは演奏映えするダイナミックなものが好まれる傾向にありますが、
ワイケルトは節度を弁えた上で、過不足なく曲の魅力を表現し尽くしたのです。

私も最初は余り期待しておりませんでした。ブル4の書法通り演奏すれば、大向こうを唸らせる様な演奏が分かりやすかったかも知れませんが、ワイケルトは曲のフレージングを大切にしつつ、楽器感の対話を促し、素朴ではあるが
人々の心の奥底に訴えかけるという方法でブルックナーのなんたるかを丁寧で誠実に伝えきりました。
多くの人々が、技巧的に物足りなさを感じるタイプの演奏とも言えましょうが、
ワイケルトはとても丁寧に聴衆に語りかけ、
私が今まで聴いてきた大家とはべつのやり方で
この曲を東洋人にも伝えたかったのではないかと思います。
そういう意味では異色の演奏。人によっては凡演としか映らなかったかも知れませんね。
捉え方は人それぞれで良いと思いますので、私の考えを無理強いするつもりはこれっぽっちもない事を表明しつつ、私にとっては居つまでも浸っでいたい様な至福のブルックナーであったと感じ入りました。いやあ素晴しかった。