>>32
日本は、その歴史発展の特殊性ゆえに、リベラリズムの自立した潮流が脆弱な
ままでありつづけた珍しい国の一つである。戦前においては、日本は、
帝国主義列強に包囲された状況のもとで、古い封建制社会から急速に帝国主義的
資本主義へと転化させる必要性から、中央集権的国家を肥大化させて市民社会の
発展を上から暴力的に押さえつけるとともに、社会の富を容赦なく奪いとって、
それを軍事力と行政権力に振り向けた。戦前の日本では国内市場の発達は貧困で、
リベラリズムの担い手であるべき「富と教養」をもった階層は脆弱なままであった。
彼らは、天皇制ファシズムの成長に抵抗する力をもたず、欧米帝国主義の暴力と
抑圧に対する民族主義的反発をばねに、天皇制政府への協力へとなだれ込んでいった。
日本のリベラリズムは「共和制」や「市民的自由」の旗さえ掲げることができず、
それらの旗は、社会主義者、あるいはコミンテルン創設後は、共産主義者に奪われた。
第2次大戦における日本の完敗と、アメリカ占領軍による戦後改革は、リベラリズムの
発展を阻害していたさまざまな政治的・経済的障壁を取り除く上で決定的な役割を果たした。
本来なら、戦後において、リベラリズムが自立した政治勢力として独自の発展を遂げるべき
ところであった。しかし、戦後の政治的ダイナミクスはそうした発展を許さなかった。