松井社長は10月13日開催の「全国図書館大会 東京大会」で、「公共図書館の役割と蔵書、出版文化維持のために」をテーマにした報告会で発言予定で、その原稿が12日にWeb上で公開。その中で松井社長は、
「『文庫』の売上げが大幅に減少しはじめたのは2014 年のこと」と前置きし、「確たるデータはありませんが、近年、文庫を積極的に貸し出す図書館が増えています。それが文庫市場低迷の原因などと言うつもりは毛頭ありませんが、
まったく無関係ではないだろう、少なからぬ影響があるのではないかと、私は考えています」と主張。

「文庫くらいは自分で買おう。そんな空気が醸成されていくことが何より重要」としつつ、公共図書館に文庫の貸し出しをやめるよう要望を出すと共に、読者に向けても「借りずに買ってください」と呼びかけています。

ところが報告会の資料では慶應義塾大学文学部教授の根本彰さんが、複数の学術的な調査に基づくデータを提示しつつ、「図書館は出版物販売数に負の影響は与えていないとの結果が出されている」とも説明。
近年になり図書館の貸出サービスに対して、作家や出版関係者が発言することが増えているものの、データに基づかない10年前の主張を蒸し返すものが多く、「議論はあまり進展していないように見える」とコメントしています。

同じ報告会の資料内だけでも矛盾が見え隠れする松井社長の発言ですが、ネット上で多くの反対意見が投稿されており、Twitterでは「文庫の売れない理由は図書館じゃなく、スマホとの競合に負けているから」
「まずは文春文庫だけを図書館から引き上げてみて、文春文庫の売り上げが回復するか調べたらいいんじゃないかな」「図書館で育ってきた才能や日本の教養が死ぬ」といった厳しい意見が見られました。