《一九八〇年代後半には、経済学者のベン卜・ホルムストロームとポール・ミルグロム
により、もう一つの重要な研究結果が示された。両氏は数々の仮説に基づく極めて理論的
な論文において、通常は売上高にかかわらず歩合をー定に保つのが、営業担当者の報酬制
度として最適であると結論づけた。さまざまな種類のボーナスを設けたり、一定期間内に
目標を達成した人に以後は別の報酬体系を適用したりするなど、仕組みを複雑にしすぎる
と、担当者たちはそれにうまく乗じる方法を見つけ出すだろう、というのだ。

 ホルムストロームとミルグロムが提案したようなシンプル極まりない報酬体系は、訴求
力がありそうに見えるが(理由のーつとして、運用しやすくコストもかさまない)「実際のと
ころ、多くの企業はもっと複雑な仕組みを選ぶ。「営業担当者はそれぞれ個性があり、モ
チべーションやニーズが異なるため、いくつもの要素から成る報酬体系のほうが幅広い層
にアピールするだろう」と考えるのだ。その理屈でいえば、個々の担当者から最高の成果
を引き出すには、個別に報酬体系を決めるべきだということになる。…》

「営業を本気にさせる報酬制度とは」ダグ J.チュン ハーバード・ビジネス・スクール 助教授
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2015年8/01号

CME Group ノーベル経済学賞受賞者ジャン・ティロールと先物の関係
http://cmegroupjapan.blog.fc2.com/blog-entry-46.html
ティロールの関心はまた、産業組織、規制、組織論、ゲーム理論、財政論、マクロ経済、心理学
など分野にも及んでいる。 さらに、2013年のCMEグループMSRI賞受賞者であるベンクト ホル
ムストロームとの共著で彼は、市場流動性についても論じている。「Inside and Outside Liquidity」
と題されたこの論文は、金融危機発生時における安全資産の可用性に焦点が当てられている。
そこでは、危機状態において、企業や国民が利用可能な範囲に借入コストを維持するために
必要となる市場流動性を供給する能力を有しているのは政府であるとして、破たんした銀行
の救済は納税者のコストで行われるべきではないとする一般の議論に、真っ向から対峙する
論点で分析を行っている。

Liquidity By Bengt Holmstrom and Jean Tirole
http://idei.fr/sites/default/files/medias/doc/by/tirole/wickyaug30final.pdf 全285頁