──資本主義の特殊性といいますと、一言でいうのはかなり難しいと思うのですが、
どういうことですか。
宇野 全経済を商品形態をもって処理するという点です。それは労働力を商品形態と
しているということが軸になっている。といっても 、もちろん 、労賃などは資本主義以前
からありますね。例えば徳川期にもあるし、それ以前からもある 。しかし、一般的に
日常生活に必要なものを作る労働が、労働力の商品化によってなされているというのが
他とは違う点です。それが重要な点ですね。だから 、労働力の商品化をなくするという
ことが社会主義の基本的問題となる。ぼくはこれをぼくの 「南無阿弥陀仏」と称している。
これはぼくの友人から聞いたことだが、法然上人は 『大蔵経』を四回か五回読んで ──
『大蔵経』といったら大変な量のものですが ── 「南無阿弥陀仏」を発見したという
ことです。ぼくは 『資本論』を読んで何を発見したかというと 「労働力の商品化」です。
( 『情況』、一九七一年五月号)

原理論の方法と現状分析 (聞きて) 『情況』編集部

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宇野弘蔵 (著)
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