蓬田守弘『垂直的国際分業の理論』は、本文80数ページの小さな本。全5章からなるが、
導入の第1章と経済的厚生を論じた第4章、第5章を除くと、垂直的分業の理論としては、
第2章「垂直的分業の背景」、第3章「垂直的産業内貿易」が中核である。ところが、後で
説明するが、第2章と第3章とは、統一的な理論ではなく、相互に排他的な仮定をおいて
議論されている。簡単にいえば、第2章と第3章とは繋がりがないというか、矛盾している。

蓬田はこの本の元になった研究でRochesterのRonald Jonesのもとで博士号をもらってい
るから、当時としては「最先端」の研究だったのだろうが、今からおもうと、ある特殊な状況
を研究したに過ぎない。