>>61の続き

難民危機
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東京財団:中東から欧州へ流れる大量の難民や移民の問題について、人道的な観点、安全保障的な
観点からどのようにお考えですか?

バーシュボウ氏:明らかに、この拡大する難民の問題は深刻な課題を生み出しており、欧州内でも
さまざまな問題が出てきています。第一に、これは人道危機です。NATOは直接的に移民問題に
取り組んではおりませんが、その原因となっている諸問題に取り組んでいこうとしています。我々が
取り組んでいる貢献の一つに、テロの脅威や大量の難民流出の原因である国内の治安悪化に対処
しようとしている地中海沿岸諸国に対する、防衛力強化のための支援があります。NATO加盟国は
それぞれ、欧州への難民流出の主たる原因となっているイスラム国を打倒するための行動を取って
います。これはチームによる取組みです。NATOは難民の受入対応以上に、その根本原因への
取組みに、より大きい役割を担っていますが、第2次世界大戦以降に発生した課題において最も難しい
この難民問題に対して、我々は一丸になって取り組んでいかなければなりません。


ルールに基づいて行動する
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東京財団:ウクライナ情勢に対処するにあたって、日本からどのような協力を期待していますか?

バーシュボウ氏:これはNATOが責任を持って対処する問題ではありませんが、ロシアに対する
国際的な制裁措置は、我々国際社会が一丸となってロシアの行為を改めさせ、ウクライナへの
侵略から撤退しなければならないという事をロシアへ示す重要な手段の一つです。日本自身が
EUやアメリカとともに制裁措置に加わっているという事実は重要な事です。これはロシアからは
良く思われないでしょうが、国際規範を破る国は代償を払うという明確なメッセージであると思い
ますし、北東アジアの主要国である日本による措置は、このメッセージに重みを増すことになる
でしょう。

 当然のことながら、この危機に対しては政治的な解決を望んでいますし、日本もG7やその他の
方法を通して、ミンスク合意が最善の解決策と考える国々に同調していると思います。しかしこれは
選択的ではなく、ミンスク合意の完全な遵守でなければなりません。明らかに、ノルマンディ・
フォーマットと呼ばれるリーダー間の対話において建設的な議論がなされ、暴力は減っていますが、
今後の動向を見守る必要があります。個人的には、ロシアはウクライナの主権と領土保全の回復を
模索しているとは思えません。

東京財団:南シナ海や東シナ海だけでなく、欧州により近い海域での中国の独断的な行動について
どのように見ておられますか。

バーシュボウ氏:我々は、日本や他のアジア諸国が直面しているような係争中の海域における中国の
軍事活動による問題に、直接的な影響を受けていません。しかしもちろんのこと、我々の加盟国は
いくつかの懸念を共有し、国際法の遵守などルールに基づいて行動する中国を期待しており、武力の
行使や単独的な行動ではなく、平和的に解決していく事を求めます。そのような観点から、数十年に
渡って欧州の安全保障を維持してきた国際規範を破って行動するロシアの道を、中国が歩まない
ことを望みます。しかしながら我々は、日本や他のアジア諸国がどのように中国による挑戦を観て
いるのかという事を理解する上で、このような国々との会合を重視しています。このような会合はこの
問題を評価する上で助けとなり、我々の主たる任務において対処する場合にあたり教訓を導き出せる
かもしれません。