河野氏: お客様のニーズにできる限り応えようとすると,激甘から激辛まで用意しなきゃいけないから,しんどいですよ。
 シリーズをずっとやってくれている人は,Mission 1で「よく来たな新人!」みたいなことを言われても,最初から敵機AIの最高ランクを超えていたりもしますし(笑)。
 やっぱり,難度は幅が要るんですよ。「俺は絶対にF-4しか使わない! 強化パーツも着けない!」みたいな方もいて,
 そういったスタイルに対してはハードルが高すぎたりもしますからね。

4Gamer: だいぶ違う話になりますが,ニーズというところでは「キ*ンペーンモードをVRで遊びたい」という声はあるかと思います。そういった方向性はいかがでしょう。

河野氏: 難しいんですよね。実はちょっと試したんですよ。キャ*ペーンモードの一部ミッションをVRにしてみて,
 PS4 Proでもガクガクなフレームレートだったものの,ミッションを体験することは一応できました。ただ,何が起こっているかが分からなくなってしまいましたね。

下元氏: 三人称視点のシーンをVRで描かれると,状況が分からなくなるんです。

河野氏: 自分はコックピットにいるのに,目の前を自分の機体が飛んでいて「俺は誰だ?」となるんです。VRが本来やってはいけない体験を提供してしまっている。
 やっぱり,VRはVRならではの体験としてイチから作らないといけないですね。

キャンペー*モードを単純にVR化すると,さっきまでコックピットから外を見ていたのに,いきなり視点が切り替わってコックピットに座る自分を外から見る……といった状況が発生する

4Gamer: 話は難度に戻りまして,河野さんはTGS 2017のインタビューで「今回のトンネルはストロングスタイル」と仰っていましたが,具体的なストロングというのは何を指していたのでしょう。

河野氏: ストロングスタイル自体は,縦に飛ばすことだったんですよ。でもまず,トンネルの入口がキュッと曲がっているのが……。

下元氏: トンネルに入るところで事故が多発しているんですよね。なぜここを曲げたのか,開発とは話し合ったんですけど。

河野氏: 菅野の中では,軌道エレベータへ入るところのアーチみたいなのもそうですが,ああいうのが無いとデザインとして成立しないんでしょうね。
 まあ,菅野のデザインがゲーム難度を上げてしまうというのも,言ってしまえばエースコンバット恒例なので(笑)。

下元氏: レベルデザインよりビジュアルデザインが先に来るんですよ(笑)。

河野氏: 縦のトンネルが決まった時点で,「今回は大変だな……」と思ったんですよ。でも,その手前にハードルが立ちはだかるのは想定外だった。

下元氏: 「ストロングスタイルはそこじゃねえ!」みたいな。

4Gamer: 今回のトンネルは,“あの名前の機体”を追って“あの空間”に入るということだったので,「魔のS字カーブが来るのか!?」と最初思ったんですけど,それはなくて安心しました(笑)。

河野氏: 今回,トンネル自体に変な曲げはなくて,それ自体は簡単だって言われてるんですよね。
 縦に飛ぶ場面でも,プレイヤーの目に見えないところで,快適に飛べるような仕掛けをいろいろとやっています。

下元氏: トンネルについても辛さを求める人はいるのですが,そこは甘口にしたんですよね。

河野氏: 実は,最初の予定では縦穴のシャッターを破壊していかなければならなかったり,最後の昇降機が動いていて,しかも爆発したりすることを考えていたんですよ。
 でも,「エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー」の“段違い平行棒”で難しくするのは懲りていたので,だいぶシンプルにしました。

・「ACE5」Mission 27のトンネルに設置され,数多くのパイロットの命を奪った“段違い平行棒”。
 直前・直後に閉まりゆくシャッターがあるうえ,前方から来た敵機とすれ違うタイミングも近いため,混乱して操縦ミスを起こしやすい >>1