もし琉球列島の諸方言を独立の言語とみなすのであれば、系統論の観点からは、琉球語と姉
妹関係にある九州の諸方言も「九州語」として独立の言語とみなさなければならない。この場
合、琉球語と日本語とを二大系統群とみなすことを含意する「日琉語族」という名称がその根
拠を失うことになる。「日本語族」(日本語族琉球語、日本語族九州語、日本語族中央語など)
と言い換えるか、あるいは英名のJaponicをそのまま用い、ジャポニック語族と呼ぶべきであ
ろう。(これを「日本列島語族」と訳すのも一案であろう)。私見では、本発表の「九州・琉球
語派」を「南日本語派」と言い換えたうえで、九州、琉球の言語を、それぞれ「日本語族南日
本語派九州語」「日本語族南日本語派琉球語」と呼ぶことで、他のJaponic系統の諸言語 (中央
語や東日本の言語) をも考慮に入れた場合、それぞれの言語に統一性のある名称を与えること
が可能となる