根底→根柢
「根底」を「根柢」とするは非なり。「柢」も「根」なり。

面倒
「面倒」と云ふ漢語は無し。

唐突
「唐突」は「牴觸」に同じく「ふれあたる」なり。今「だしぬけ」「突然」の意に用ゐるは當らず。

挨拶
「挨拶」の「挨」は「推す」なり。「拶」は「排進」なり。即ち前に在るものを推し除けて進むことを「挨拶」と謂ふ。
今「返答」「應對」「ことわり」等の意に用ゐるは當らず。

理屈→理窟
「理窟」の「窟」は「穴」にて奧深く幽き所、よりて事理の深く聚る所の義に謂ふ。
今誤りて「理屈」に作るもの多し。「屈」は「かゞまる」なり。

貨物
「貨物」は「貴き物」の義にて「貴重品」なり。
今啻に「物品」「荷物」の義とするは當らず。

いまだ(未だ)
國字の「いまだ」と漢字の「未」とは必ずしも同義に非ず。
「いまだ」は俗に「今でも」と云ふに同じく打消の意なし。
「帝はいまだ六波羅におはします」
「君はいまだ獨身なるか」
の如し。
漢字の「未」は俗に「まだ……せぬ」と云ふ打消の意をあらはす。
「未だ報いず」
「君は未だ遠くは行かじ」
などの如し。
されば假名を用ゐると漢字を用ゐるとは其の句の意味によりて定むべし。