医療目的の食用

中山太郎「祭祀の起源と民俗」では沼津付近に親類縁者が遺骨を齧る風習がある事を記録しています。
こうした「骨噛み」は沼津だけでなく少なくとも明治期には各地で見られたようです。
例えばいわゆる「極道」の世界では親分が殺された際に子分がその遺骨を齧って復讐を誓った
といった話が残されていたりします。

医療目的による食人は、我が国でも比較的多く記録が見られます。歌舞伎「生寫朝顔日記」や
「摂州合邦が辻」などでは特定の年月に生まれた人間の生き血を用いると即座に病が治るという話が
取り入れられていますし、落語「肝つぶし」でも同様に特定の年月に生まれた人間の臓器が薬になるという
内容が出ています。そして実際にも、肝臓・肺・心臓が眼病に、脳はカビ毒、生肉はハンセン氏病に効くと
されていたようです。
徳川期には首切り役人・山田浅右衛門が生胆嚢を原料とした生薬を作り販売していました。