杉本つとむ『異体字とは何か』桜楓社、1978
>現在の当用漢字字体も、(略)〈正体〉を尺度にするならば、明らかに〈異体字〉である。戦前の教育を受けた人たちからすれば堕落の標本とまで映るであろう。
>現代の当用漢字は字体に関する限り、異体、異体、異体なのである。(p.70)

>(略)明治のブルジョア革命と、第二次大戦後の旧思想、無政策な政府や教育は、この長い間の日本人の漢字史に思想と、それにふさわしい文字を確立することができなかった。
>そしてそのままわずかに制限や、一部思いつきなしくずし的略字で、間にあわせてしまったのだ。
>〈觸〉は〈触〉、〈燈〉は〈灯〉とするといった当用漢字字体の制定など、まさに中世的であり、わが先輩に、ザンキせざるべけんやではないか。(p.243)