「収蔵品 大半移す」 金沢に新設の国立工芸館 馳文科相に聞く
(北陸中日新聞 2016年7月26日)

 東京国立近代美術館工芸館(東京・北の丸公園)の地方移転で、馳浩文部科学相は、金沢市に新設される国立工芸館を“本体”と位置付け「大半のものを持ってきたい」と語り、
将来的には全面移転も検討する考えを示した。24日に同市内であった市民勉強会に出席した後、本紙のインタビューに答えた。(鈴木弘)

 −改めて移転の狙いは。
 「工芸館の機能強化が最大のメリットだ。文化性の向上、求心力と発信力の強化につなげたい」

 −金沢は分館ではなく本体という位置付けか。移転規模はどれくらいになるのか。
 「そういうことだ。3500点ほどの作品があるが今でも200%の収蔵状況にある。受け皿となる施設は現在と同程度なので厳選して大半を移転するのが第一段階となる」

 −将来的には全面移転するつもりか。
 「今後、考える必要があると思う」

 −移転は首都直下型地震に対するリスク回避の側面もあるのか。
 「それも一つの理由だ。これまで国立の美術館は東京と京都、大阪にあるが日本海側にはなかった。全国展開する上で金沢に移転する意味もある」

 −館長は新設するのか。スタッフは10人という数字も出ている。
 「館長は金沢に常駐してもらう。ただ、行革の流れもある。国立の職員としてのスタッフを二倍や三倍に増やすことは不可能だ。機能強化に関する職員の増員は
石川県や金沢市にも応分の負担をお願いしたい。それは官民挙げて(協力してほしい)ということだ」

 −金沢に来れば工芸の全てが見られるといったイメージか。
 「全部というと語弊がある。日本の工芸のエッセンスを発信する場所が金沢になればいい。(人や物が行き交う)プラットホームの役割を果たす必要があると思う」

 −地元の美術館との役割分担や大学との連携は。
 「コラボは大切だ。その前に3500点の作品があるし、持ち込みたいというものを受け取れない状況がある。収蔵機能の拡充も検討しなければいけない。続々と現代的な、
未来的な発想で収蔵品を増やしたり、展示にお借りしたりすることを考えたい」

 −教育や普及、人材育成の中心機能も担うことになるのか。
 「そこが連携事業の最たる部分だろう。地元の金沢美術工芸大だけでなく、京都市立芸術大、東京芸術大など、自治体で美大をもっている所、高等教育機関との
連携ができると思う」

 −受け入れの機運を盛り上げるには。
 「まず今年の12月から来年1月ぐらいにかけて石川県立美術館で(工芸館の収蔵品を利用した)特別展を開催したいと考えている。テーマは秘密だ」

 −建築でも世界的に評価の高い金沢21世紀美術館のように建物自体の魅力も重要だ。設計に著名な建築家によるコンペを採用する考えはないか。
 「そこは石川県に聞いてもらいたい。ただ、県もいい所に目を付けた。兼六園周辺文化ゾーンという位置付けはヒットだと思う。それにふさわしい設計・デザインを
期待している」