「第1層」と「第2層」は遺伝的に明確に区分でき、早い時期に分岐したのではないか、というわけです。
本論文はこれに関して、二つの仮説を提示しています。

一方は、「第1層」集団が南方からシベリアへと拡散して寒冷地に適応して「第2層」が形成された、というものです。
もう一方は、「第2層」の起源はアジア西部またはヨーロッパにあり、ユーラシア北部を東進してきた、というものです。

本論文は、さまざまな証拠を考慮に入れて、北方系の「第1層」と南方系の「第2層」は早期に分岐し
前者はヒマラヤ山脈の北を、後者は南を東進してきた可能性が高い、と推測

「第2層」は45000年前頃にユーラシア西部からシベリアを経由してユーラシア東部へと移住してきて、
その考古学的指標は細石刃伝統ではないか、と本論文は想定しています。つまり単純化すると、

(中国北部以南の)ユーラシア東部においては、元々は南方系の「第1層」が拡散しており、
農耕開始とともに北方系の「第2層」が南下していき、ついにはポリネシアにまで拡散した、というわけです。

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「第1層」のY-DNA は D1 : 縄文人とイ族、チベット・ビルマ人
「第2層」のY-DNA は O1, O2 : 黄河文明人、長江の稲作民、弥生人