新潟三越は1907年創業の小林呉服店が源流で、36年に小林百貨店として開業。55年に新潟大火で
併設する映画館とともに全焼したが、2年後には焼け残った骨組みを元に再建し、78年には三越グル
ープと業務資本提携、80年には名称も「新潟三越百貨店」となり、グループ入りした。しかし、売上高
はピークの250億円から129億円に落ちた。老朽化した店舗はリフォームが必要で、コストに見合った
見返りが見込めないとして閉店を決断したという。

三越伊勢丹は2017年3月に三越千葉店と同多摩センター店、18年3月に伊勢丹松戸店を閉めた。17
年就任した杉江俊彦社長は、退職金を最大5000万円積み増す条件で早期退職を実施。高級スーパ
ー「クイーンズ伊勢丹」運営会社の株式の66%を売却、婦人服販売子会社も清算した。こうしたリスト
ラに伴い18年3月期決算は純損益が9億円の赤字を計上(前期は149億円の黒字)したが、19年3月
期については売上高こそ1兆1950億円と前期比5.8%の減収を見込むものの、営業利益は290億円
と18.8%増の大幅増益、純利益は130億円への黒字転換を見込んでいる。

同一地域に重複店舗

ただ、店舗の閉鎖がこれで終わるとは誰も思っていまい。今回の発表の席上、地方店の閉店につい
て白井常務執行役員は「今後もありうる」と明言している。業界や不採算店を抱える地域では「次の
候補」をめぐり、見方が交錯する。

まず挙がるのは、新潟三越と新潟伊勢丹が併存する新潟市のように、同一地域に店舗が重複する
ケース。例えば札幌市は、伊勢丹が地場の丸井今井を救済してグループ化し、札幌三越と競合する。
北海道の商圏は一定の規模を擁するが、JR札幌駅に大丸札幌店もあり、競争は厳しい。

福岡市も伊勢丹が地場の岩田屋を救済してグループ化し、中心部の天神で福岡三越とバッティング
している。札幌と同様、JR博多駅に博多阪急もあり、2店を維持できるか、疑問視する声は多い。

三越伊勢丹の大都市の店舗は、富裕層に加えインバウンド消費も伸びて、業績は堅調だ。同社の収
益を支える伊勢丹新宿本店(東京都新宿区)、三越日本橋本店(東京都中央区)、三越銀座店(同)
の3店で、三越伊勢丹の百貨店事業の売上高の半分程度を稼ぐ。三越伊勢丹は3店の改装に巨費を
投じ、それが売り上げを伸ばすという好循環が続き、地方店との社内格差は広がるばかり。「旗艦3店
だけにすれば、経営効率の点では最強の百貨店になる」(アナリスト)との声も出る。もちろん、それは
現実的ではないが、不採算店の閉鎖を含むリストラがまだ続くのは間違いなさそうだ。