インバウンドにも大人気!
大正ロマン 風情残して 門司港レトロ地区(北九州市)
おもてなし 魅せどころ
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO43962470Z10C19A4H91A00/
関門海峡の北九州市側に位置する門司港地区には、明治・大正時代にタイムスリップしたかのような
ノスタルジックな街並みが広がっている。中心にあるJR門司港駅は3月、約6年間の駅舎修復工事を
終え、1914年の竣工当時の姿に復元にされた。インスタ映えする街並みを写真に収めようと、
アジアからのインバウンド(訪日外国人客)をひき付けている。4月上旬、門司港駅前には
ウエディング衣装に身を包み写真撮影をする香港人カップルの姿があった。新婦のキャサリン・ウー
さんは「香港では古くて豪華な建物はあまり残っていない」という。北九州市はこうした
フォトウエディングの誘致に力を入れている。建築ファンも集まる。日本近代建築の黎明(れいめい)
期を一度に楽しめるからだ。左右対称の外観デザインが威容を放つ門司港駅はネオ・ルネサンス様式。
八角型の塔屋が特徴的な「旧大阪商船」はドイツ・オーストリアの芸術革新運動、分離派の影響を受け
たという。白と青みがかったグレーのコントラストが目を引く「旧門司三井倶楽部」は北方ヨーロッパ
の木造建築技法(ハーフティンバー様式)を取り入れた。「一気に衰退したことで逆に街並みがそのまま
残ったと言われます」。北九州市門司港レトロ課の奥村和美課長が解説してくれた。門司港は1889(
明治22)年に開港。1916(大正5)年には外国貿易船の出入港数が横浜や神戸を抑えて首位になり、
金融機関、商社が相次ぎ進出。日銀や税関なども拠点をおく経済の中心地となった。転換点は42(昭和17
)年の関門鉄道トンネル開通だった。門司港駅を経由せず本州と行き来できるようになり、物流拠点と
しての重要度が低下。さらには国鉄民営化でJR九州の本社中枢機能が福岡市へ移転、門司港地区は
古い建物が残る寂れたエリアとなった。観光資源になると目をつけたのが建設省(現国土交通省)出身
の末吉興一・前北九州市長だ。総事業費300億円、7年の期間を費やし95年に「門司港レトロ地区」と
して再生。官民協働の「門司港レトロ倶楽部」が立ち上がり、街づくりや観光整備を主導してきた。
観光客数は2017年、226万人と96年時点から倍増した。消費額は181億円と3倍近くも増えた。
奥村課長は「ハード面の整備は大きく進んだ。訪日客受け入れ体制の拡充や、より長時間滞在して
もらうための施策など、ソフト面に力を入れていきたい」と語っている。(西部支社 今堀祥和)