金正恩氏再訪中 米朝、非核化の溝埋まらず 中国巻き込み神経戦
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 【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が短期間に2度の訪中に踏み切ったのは、米朝首脳会談を念頭に置いた行動であることが確実だ。
非核化をめぐって「段階的措置」を求める金正恩氏に対して「恒久的な核廃棄」という高いハードルを下げないトランプ米政権。
史上初の米朝首脳会談を控え、中国も巻き込んだ神経戦が繰り広げられている。

 「北朝鮮とは非常に内容のある協議をしている」。トランプ大統領は4日、記者団に米朝首脳会談の日程と場所は「決まった」としてこう述べ、間もなく発表するとした。

 だが、8日現在も何の発表もなく、金正恩氏は外遊をこなしていた。韓国では、具体的な非核化策をめぐる詰めの協議で米朝の溝が埋まっていないためだとの見方が出ている。

 「全ての核兵器や弾道ミサイル、生物・化学兵器、関連する計画を含めた北朝鮮の大量破壊兵器の完全かつ恒久的な廃棄を達成しようという共通目標を確認した」。
ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は4日、ホワイトハウスで谷内正太郎国家安全保障局長と会談後にこう強調した。

 ポンペオ国務長官も2日の宣誓式で「大量破壊兵器の恒久的かつ検証可能、不可逆的な廃棄」の実現を掲げた。
これまで米国が求めてきた「完全な非核化」から「恒久的」とハードルが上がり、しかも生物・化学兵器を含めた大量破壊兵器に対象が拡大したのだ。

 完全な核放棄まで制裁・圧迫を緩めようとしない米国の姿勢にも、北朝鮮メディアは「情勢を白紙に戻す危険な試みだ」などと繰り返し非難。
大連での習近平国家主席との会談で、金正恩氏は各国が「段階的、同時的措置」を講じた非核化を主張した。
金正恩氏が非核化での段階的措置に最初に言及したのも、3月の習氏との初会談でだった。

 中国もこの発言を繰り返し公表することで「段階的措置」への支持を暗に表明した形だ。
金正恩氏の今回の訪中は、米朝会談に求めるのは段階別に制裁の解除といった見返りが伴う措置であり、最初から生物・化学兵器にまで枠を広げた協議は拒否するとの意思を行動で示したといえそうだ。