財政破綻後 小林慶一郎著 アマゾンレビュー

この書では、財政破綻の直撃を受けるのが医療と福祉であるとして詳細にシミュレーションしてある。
私は医療関係者なので他人事でなく、これらは必ず起こる未来であると確信した。
医療費の公費負担分は未収金として積み上がり民間医療機関は倒産し、透析医療を受けている患者は命を落とす。
1991年ソ連崩壊時の2ヶ月で透析患者のほぼ全てが死んだという。

財政破綻→焼け跡リセットについては、財政破綻というテールイベントが起きた場合、
物価はコントロール不能になって物価が3倍、4倍になる高インフレになる。
それに対して、財政破綻せずに消費税を30%上げるという財政再建策を実行したら、物価は1.3倍になるだけで、
国民生活に与える経済学的なコストは小さいと推測している。

財政破綻の確率については第2章において、佐藤、小黒(2016年)がモンテカルロシミュレーション等を用いて試算しているところによれば、
仮に首都直下型地震が起きれば2025年に破綻確率は40%に、また何らかの財政再建の努力がなければ、
2035年の破綻確率はほぼ100%に上がる。わが国の財政が2030年代に危機的な状況に陥る可能性が高いことが示唆される。

本書では遠まわしに、”破たんの責任は結局のところ国民自身にある”とのべ、その日が来ても戦犯さがし”的行為はさけるべきであるとしている。
それでも庶民は重税に耐えながら医療・福祉が大幅に制限された世界を生き延びて、政府債務の償還に協力することになるのだそうだ。
たぶんそうなんだろう、と俺も思う。 こんなに絶望的な本がなんでベストセラーなんだろう?


日本の歴史を見れば、エスタブリッシュメントは棄民で、プロレタリアートは共食いである。
人権嫌いで自己責任論大好きな、共感性と良心に欠けた民族が財政破綻を迎えると、日本は地獄絵図になる。
日本が人間農場(ディストピア)になる未来は近い。