メンバー紹介を経てのライブの後半は、“トロピカル3部作”の「Roochoo Gumbo」「北京ダック」「香港Blues」を皮切りに、
カントリー、ブギウギの軽快な楽曲でオーディエンスを歓喜に包んでいく。中でも欧米ではっぴいえんどの「風をあつめて」と並び
高い人気を誇る「Sports Men」は、盛大な、割れんばかりの拍手で迎えられた。演奏中、観客たちは両手を広げ、
何度も手のひらを打って喜びを表現。さらに「Cow Cow Boogie」へのリアクションも同じような熱気を帯びていた。
そして「Ain't Nobody Here But Us Chickens」「Pom Pom 蒸気」「Body Snatchers」「The House Of Blue Lights」と畳みかけるラストは
飛沫を上げるようなスリリングな演奏で、会場に最高潮の興奮をもたらした。

アンコールでは、再びステージに登場した細野が「ゲスト、矢野顕子!」と言って矢野を呼び込むと、この日一番の歓声が
Gramercy Theatreの空気を振動させた。演奏された曲は「相合傘」。まず細野が歌い、矢野が受け、続いて2人のハーモニーが
奏でられる幸福感に満ちたパフォーマンスに、オーディエンスはみな高揚感を隠し切れないといった様子。
さらに矢野が舞台袖に下がったあとのアンコール2曲目では、細野がギターをFENDER Jazz bassに持ち替え、
歌うようにしてベースを弾くYMOの楽曲「ABSOLUTE EGO DANCE」が届けられる。冒頭のフレーズが聞こえた途端、
場内には叫喚と言っていいほどの声が響き、瞬く間に終演。終盤のMCで「I'm Sleepy……Jet lag」ととぼけた細野だったが、
客席に手を振り、ステージをあとにする彼の表情はいつになく満ち足りたもののように見えた。
フロアには客電が点灯したあともしばらく、最前列でステージを見つめ続けるオーディエンスの一群が。
呆然と立ち尽くす彼らの姿が、この日のライブの余韻を物語っていた。

細野晴臣「Haruomi Hosono Gramercy Theatre」5月29日 アメリカ・ニューヨーク Gramercy Theatre セットリスト
01. Si Tu Vois Ma Mere
02. Tutti Frutti
03. Down The Road A Piece
04. Back Bay Shuffle
05. Radio Activity
06. 薔薇と野獣
07. 住所不定無職低収入
08. CHOO CHOO ガタゴト
09. Angel On My Shoulder
10. I'm A Fool To Care
11. Roochoo Gumbo
12. 北京ダック
13. 香港Blues
14. Sports Men
15. Cow Cow Boogie
16. Ain't Nobody Here But Us Chickens
17. Pom Pom 蒸気
18. Body Snatchers
19. The House Of Blue Lights
<アンコール>
20. 相合傘
21. ABSOLUTE EGO DANCE