滋賀県栗東市にある伊勢遺跡は、弥生後期の遺跡。
この伊勢遺跡内に設けられた祭殿などの建物群の周囲には、楕円形の円周上に建てられたとみられる複数の建物跡がある。
この円周上の建物が向いている中心点は2箇所あり、それぞれの中心点の位置が研究者によって割り出されている。
最初に建設された建物列は東側の円周上に建てられたもので、後にこの建物が解体されて西側の円周上の建物の建材に用いられたとみられている。
その西側の建物列は後から建てられたものであるが、説明の都合上先に取り上げることにする。

西側の建物列は、2棟。
この2棟には、SB4、SB5と名称が付けられている。
2棟が向っている中心点を通る東西線に対して、SB4は南に15度の角度の軸線上に乗っている。
この15度の角度は、二十四節気の立春点と重なる。
次のSB5は、中心点を通る東西線に対して南に28度の軸線上に乗っている。
この28度の角度は、二十四節気の冬至点より2度北に進んだ位置になる。
二十四節気の30度の角度の冬至点と重なっていないのであるが、近江の栗東市あたり(大津市)の実際の太陽の日没角度がこの28度の角度になることを考えると、
建物SB5は二十四節気の暦上の冬至点の位置よりも実際の太陽の沈む冬至点に向けて建てられていたと考えることができる。
おそらく、現実に祭祀を行う際に、建物SB5の中央を通る軸線と実際の太陽の日没の方角がずれることを避けたものと思われる。
一方、建物SB4の場合は、二十四節気の立春点と一致する角度に建てられており、この場合は、おそらく実際の立春の太陽の日没位置と二十四節気の立春点の位置がずれていても、
そのずれは目視では認識できないため、二十四節気の立春点の方角に建物を建てても問題とはならかったのだと考えることができる。
このように、伊勢遺跡の西側の楕円円周上の建物の角度は、実際の太陽の冬至点と二十四節気の立春点に対応するものであるとみなすことができる。

                                      続く