「 平和ボケの日本人が読むべき1冊 」
『週刊新潮』 2017年9月7日号
日本ルネッサンス 第768回
http://yoshiko-sakurai.jp/2017/09/07/7027

日本が近隣諸国の歴史認識問題に振り回されるのはこの認識が不十分なためだとの色摩氏の指摘を心に刻みたい。中国、韓国両国に
対してだけではなく、私たちは大東亜戦争に関してあらゆる意味で引け目を感じている。それは戦時国際法への無知から生じているのだ。

たとえば真珠湾攻撃である。わが国は攻撃開始30分前に最後通牒をアメリカ側に手交する予定だったが、ワシントンの日本大使館は
攻撃開始から40分過ぎて手交した。このことで騙し討ちなどと言われるが、色摩氏は「奇襲攻撃は今も昔も、国際法上合法でわが国が
不当な汚名を甘受するいわれはない」と断じている。

たとえば1939年のドイツによるポーランド侵攻、41年のドイツのソ連奇襲と独ソ戦開始、65年のアメリカの北ベトナム攻撃、4度にわたる
イスラエルとアラブの戦争、北朝鮮や中国が韓国に攻め入った50年の朝鮮戦争など、どの国も事前に宣戦布告をしていない。そのことで
責められてもいない。現在も宣戦布告は国際法上の義務ではない。私たちはこうしたことも知っておくべきだ。

戦争に関する法理という視点に立てば、「日本は先の大戦を立派に戦い、そしてある意味で立派に負けた」に過ぎない。