【諭吉と慰安婦と狂人日記】

福沢諭吉ともあろう人が、
○「子供の手術のために身体を売る」ことと、
○「子供の手術のために娘を売る」ことの違いを
理解できていなかったとは到底思えません。

後者の本質は人身売買です。
「忠孝」の儒教的家族制度の信奉者の眼には、それは
「孝行娘の美談」と映るかもしれませんが、たとえば
16世紀ポルトガル宣教師からみれば日本の奴隷を生む
「風習」にしかみえませんでしたし、拙>>241
精神を患った『狂人日記』のトリックスターの眼には
「食人行為」にすらみえたかもしれません。

いまから100年前、《中国の古い社会制度、とくに家族
制度と、その精神的支えである儒教倫理の虚偽……》を
食人イメージに重ねて告発した小説が魯迅『狂人日記』と
されるのですから。 (*竹内好の岩波文庫版の解説)

家長に娘を娼婦にする権限を認めた古の儒教的家族制度を
諭吉氏が是認していたと平山洋さんが判断されたとしたら、
その根拠を是非教えてほしいと思うだけです。