【47】

先述のようにアメリカは、かえって日本を戦争に駆り立ててしまうことを嫌い、
だから敵性国家であるにもかかわらず、これまで石油の禁輸は行わなかった。

ところがアメリカは、日本の南印進駐を、東南アジア方面への攻撃準備と見た。
それも、既に決意を固めた上での攻撃準備と。
この旨はコーデル・ハルが野村吉三郎に語っている。

だから理屈としては、アメリカにとって、これで石油の禁輸を行わない理由はなくなってしまった。
また、ここでアメリカが強硬姿勢を見せることで、
可能性は小さいが、あるいは日本は戦争を思いとどまるかもしれないということになる。

事実は逆で、石油を禁輸されたために日本は戦争を決意していくのだが、
アメリカにそこまで分かるわけがなかった。