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昭和廿年十月廿日-廿二日、朝日新聞掲載、美濃部達吉博士寄稿

 「私は所謂「憲法の民主主義化」を實現するためには形式的な憲法の條文の改正は必ずしも絶對の必要ではなく、
現在の憲法の條文の下に於ても、議院法、貴族院令、衆議院議員選擧法、官制、地方自治制、その他の法令の改正及びその運用により、
これを實現することが十分可能であることを信ずるもので、假令結局に於てその改正が望ましいとしても、
それは他日平穩な情勢の恢復を待つて愼重に考慮せられるべき所で、今日の逼迫せる非常事態の下に於て、
急速にこれを實行せんとすることは徒に混亂を生ずるのみで、適切な結果をえる所以ではなく、
從つて少くとも現在の問題としては憲法の改正はこれを避けることを切望して止まないのである。
(略)
 私は民主主義の政治の實現は現在の憲法(帝國憲法)の下に於ても十分可能であり、憲法の改正は決して現在の非常事態の下に於て
即時に實行せねばならぬ急迫した問題ではないと確信する。
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