つづき。

さて『礼記』の記述はシンプルで、「使者に『彼(子路)の死体を塩漬けの晒しものにした』と言われ
孔子は弟子に命じて塩漬け肉を棄てさせた」(使者曰:“醢之矣。”遂命覆醢)とあるだけ。
醢には『刑死体を晒しもの等の為に塩漬けにする』の他に『食用塩漬け肉』の意味もあるが、
少なくともこの記述だけでは塩漬け肉が人肉だと断定できる根拠は無い。

仮に「これは人肉であり、当時は人肉食が普通であったから特に書かれなかったのだ」という
言説があったとしても、断定できる他の文献等の傍証が一切無い以上、想像の域を出るものじゃない。

『荘子』は該当する記述のある「雑篇」自体が晋代までの偽作の疑いが強いものの、
全体に孔子への痛烈な批判の多い書物なので、孔子サイドの『礼記』と有る程度対照できる。