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山中教授の発言に激怒したノーベル賞委員会

ノーベル賞関係者が、いかにノーベルの遺志を守ることに努めているか。
最近刊行された『ノーベル賞の舞台裏』(共同通信ロンドン支局取材班編、ちくま新書)では、ある外交筋の話として、
京大教授の山中伸弥が2012年にノーベル生理学医学賞授賞の一報を受けた際の記者会見での発言に、
ノーベル賞委員会が激怒したという話が紹介されている。

山中はこの会見の冒頭、「日本、日の丸の支援がなければ、こんなに素晴らしい賞を受賞できなかった。
まさに日本が受賞した賞」と発言していた。

しかし、委員会はこれに怒り、「あんな発言は絶対にしてはいけない」と異例の警告を発したという。
その理由について本書では次のように説明されている。

《委員会側の見方に立てば、山中の日本政府への謝辞は、受賞者の功績と国家を混同したもの。
ひいては「ノーベル賞は日本という国を意識して受賞者を選んだ」という批判につながりかねない。
特に自然科学系のノーベル賞にそうした政治性が入り込む余地はないはずだが、
アルフレド・ノーベルの精神を汚す可能性が生まれること自体を彼らは嫌悪している》

ノーベル賞関係者はこの点に関して徹底しており、ほかにも、
受賞者を指す際に勝者や獲得者を意味する者を意味する「WINNER」という言葉が使われることを極端に嫌い、
報道関係者がうっかり口にしようものなら、「LAUREATE」(栄誉や栄冠にふさわしい人物の意)と言い直されるという。

一時期はノーベル財団が、各国外交団が大使館や大使公邸で受賞祝賀会を開くのを禁じていたことさえあったらしい。

ここまで波紋を広げるのも、ノーベル賞という存在の大きさゆえだろう。
とくに日本では、ノーベル賞が過大に扱われるきらいが強い。
毎回、日本人授賞者が出るたびに、日本からは報道陣が総出でストックホルムに押し寄せ、
授賞者の行動を逐一伝えているが、そんな国はほかにないらしい。