北朝鮮制裁はザル、トランプ氏は変えられるか
By Gerald F. Seib
2017 年 10 月 17 日 12:02 JST

――筆者のジェラルド・F・サイブはWSJチーフコメンテーター

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 アフリカ南西部のナミビアの中心地に広大な独立記念博物館がある。
その目玉は、革命の指導者で独立したナミビアの初代大統領だった
サム・ヌジョマ氏の巨大な英雄像だ。あり得そうもないことだが、
この光景は一触即発の世界で最も危険な問題と大いに関係している。
それは北朝鮮の危険な核・ミサイル開発プログラムをめぐる議論である。

 ナミビアのこの事例は2つの重要なポイントを教えてくれる。
1つ目は、さまざまな国が北朝鮮に経済的、軍事的な支援を提供していることの
責めを負わなければならないということである。
2つ目は、北朝鮮を外部世界や国際経済体制から本当に遮断するために
経済的圧力を行使する余地がまだ多くあるということだ。

 どちらの教訓も今や極めて重要だ。ドナルド・トランプ米大統領が時折、
北朝鮮の核の脅威に対処するため軍事オプション行使の方向に向かっているような発言を
するだけになおさらだ。経済的圧力も外交的孤立も、北朝鮮の核・ミサイルの追求を
弱めるのに効果を発揮していないと結論付けるのは簡単だ。だが実際のところは、
北朝鮮はずっと経済的に孤立していると思われてきたにもかかわらず、
国際社会はこれまで、北朝鮮に対し経済制裁を全面的に科してこなかったのだ。

 ようやくここに来て、トランプ政権の有意な対策の結果、それを転換させるプロセスが
始まったようだ。国連安保理および米国単独の新たな経済制裁が北朝鮮を実際に
圧迫しつつあるように見える。より重要なことは、実際に制裁を科すための取り組みが
以前よりもはるかに積極的になっているように見えることだ。ただ、時間が必要だ。

 国連が今年発表した長くてびっしり書かれた報告書は、北朝鮮がいかに巧妙に
制裁逃れを行い、またいかに多くの国がそれに手を貸してきたかを詳細に分析している。
同報告によれば、北朝鮮は「禁制品の貿易を通して制裁を逃れており、
その手法は大規模かつ巧妙になっている」。
一方、制裁を科す各国の取り組みは「不十分で、かなり一貫性がない」という。