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アンリン郡の村人によれば、韓国軍はとりわけ女性にとって恐怖の的だった。
韓国兵は残忍なやり方で女性をレイプしてから、殺すケースが多かったからだ。

こうした残虐行為が明るみに出てきたことに、ベトナム政府は神経をとがらせている。
虐殺があったこと自体は、政府首脳も承知している。だがベトナム当局は、
虐殺事件の報告書が国内で発表されることは望んでいない。
友好関係にある韓国政府はもちろん、ベトナムに莫大な投資を行っている
大宇や現代、三星といった韓国財閥の不興を買うことを心配しているからだ。

補償より謝罪の言葉を

さらに政府当局には、観光客としてベトナムを再訪する韓国の元兵士が
増えている状況に水を差したくないという思いもある。
だが、韓国軍の残虐行為を目の当たりにした地元の当局者は、
観光や経済発展のために真実を隠すべきではないと考えている。

地元が望んでいるのは、韓国政府の公的な釈明だ。
たとえば韓国側から謝罪や罪を認める発言があれば、両国の絆はむしろ強まると、
地元の人々は考えている。

「韓国軍は、この地域にかつてない災厄をもたらした。犠牲者は銃を持てない
老人や女性、子供たちだ」と、フーイェン省のある当局者は言う。
「私たちが望んでいるのは、物質的な補償ではない。それよりも共感と友好の
姿勢を示してほしい。犠牲者が過去を忘れられるように」

韓国軍のために流された罪なきベトナム人の血の量を考えれば、なんとささやかな要求だろう。

"ニューズウィーク日本版"2000年4月12日号