三島由紀夫は 「田舎の隊で検査を受けた方がひ弱さが目立って採られないで
すむかもしれない」 という父の入れ知恵により本籍地の加古川で徴兵検査を
受けたが、結局は合格した。
しかし、招集される数日前からかかっていた風邪を軍医が肺病と誤診して、
入隊免除となり、帰宅を許された。検査場の門を出るやいなや、三島は
付き添ってきた父親と一緒に脱兎のごとく逃げ出した。「さっきの決定は
取り消しだ」 と言われはすまいかと恐れた。父親の表現によれば
「逃げ足の早さでは脱獄囚にも劣らぬ」 勢いで、一目散に駆けだし、
ひっそりと故郷に隠れ住んだ。
かくて、三島由紀夫は兵士として戦場に行くことなく、のうのうと
生き永らえ、晴れて終戦の日 (8月15日) を迎えた。
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