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 金体制がとりわけ厳しい目を向けているのは若者のスラングやファッション、
音楽、ダンス、髪型などだ。金氏は北朝鮮の規範からの逸脱を、
国家イデオロギーにとっての「危険な毒」と呼んでいる。

 若い世代の北朝鮮人は、それまでの世代に比べ、
体制に揺るぎない忠誠を誓う理由が少なくなっている。
こう指摘するのは、脱北者の韓国移住支援団体の代表を務めるセオ・ジェピョン氏だ。
国による物資配給システムは崩壊した。
今では、ほとんどの人が密輸したり闇市場で働いたりして自活している。
豊かさらしきものを覚えているのは、高齢者だけだ。

 20年前に北朝鮮を離れたセオ氏は、「金正恩氏は若い指導者として、
より進歩的だろうと期待されていた。だが結局、支配力を強めただけだった」と語る。

 金氏は4月、労働党員に対し、若者を教育し、統制せよと演説。
「現実として…新たな世代のイデオロギー的思考に深刻な変化が起きている」と述べた。

 金氏は自身の祖父や父にも増して、外部の情報やメディアの流入を
完全に抑制することはできない。世界のインターネットにアクセスできる北朝鮮人は
ほとんど存在せず、大半は国営テレビのチャンネルにしかアクセスできない。
だが脱北者によれば、北朝鮮人は以前からKポップや韓流ドラマを
USBに入れて密輸しており、友人や家族の間でひそかに交換しているという。

 北朝鮮の専門家は金氏について、外国の影響が若者に及び、
国の体制はおろか自分自身に対して疑念が生じる可能性を恐れているのだろうと言う。