北大医学部にいた友人が
燃えないゴミ回収の朝に電熱器を拾ってきて
下宿荘の一室で暖を取ってたら、
それが壊れていて火事になりそうなことがあった。
自分の貧乏さを笑い飛ばしてていた友の笑顔を思い出す。

秋田県の農家出身で父親を事故で亡くしていた
彼は県の奨学金とアルバイトで医学生をしていた。
やせぎすの長身。
少し猫背気味で目を下に落としながら小さな声で話す友だった。
俺と二人で、青酸ナトリウムをパラフィンフィルムで包んでは
チューハイの中に放り込んで、互いに呑んではスリルを楽しんでた。

哲学書、詩集、ジャズとモーツァルトと森田のレコードに囲まれた下宿生活。

そんな友も1999年の夏に突然死んだ。
函館で精神病院の副院長として
多くの鬱病患者と向かい合い共に戦った後の
突然の死だった