>>143
むしろ自分は家に帰らなきゃと一層感じるようになった
あの子が棚の上の小さな桐箱になってから
しんと音もなく暮れていく一人の家に
「ああ、あの子はいつも一匹でこんなふうに」
と身にしみて
せめて同じ数だけの夕暮れを、あの子と一緒に過ごしたい、過ごさなければと
酒も今は呑む気にならない
あの子が居た頃は、飲んでいた
その間、自分はスマホやパソコンや本ばかりで、あの子には横顔か背を向けていた
一緒にいる唯一の生き物が自分を無視して酒くさい
どれほど寂しくつらかっただろう