「3000円、ラスト」立ちんぼ売春で生き延びる歌舞伎町の少女たち〜19歳・リコ(仮名)の場合〜

昨年、貧困女子高生を取り上げたNHKの番組がきっかけとなり、注目されるようになった
「見えない貧困」の中で暮らす少年少女たち。「普通に生活しているようだが、実は貧困」という、
一見すると分かりにくい子供たちの置かれた厳しい状況に、改善を求める声が相次いでいる。

だが、一方で「見える貧困」の中で懸命に生きようとする子供たちは、その実態が
あまりにも悲惨すぎて、テレビなどの大手メディアが取り上げることは少ない。

わずか3000円で春をひさぐ19歳の少女リコ(仮名)

新宿・歌舞伎町から大久保方面へ抜ける細い道路の両端に立つ、4〜5人の少女たち。
その前を横切ろうとすると、携帯に向けられていた視線をこちらに投げかける者、
なにか言いたそうに足を踏み出そうとする者、そのまま携帯を見続ける者、と様々な反応を見せるが、
一人の少女がボソッと放ったひと言が衝撃的なものだった。

「3000円、ラスト」

19歳のリコ(仮名)は、東京西部の実家を飛び出して以来、3か月ほど歌舞伎町で暮らしている。
「ギャル」らしいメイクのリコだが、金髪に染められた髪の根元は黒い部分が目立ち、
白いジャケットの襟部分は、ファンデーションか垢で薄黒く汚れているのがわかる。
いや、衣服の全てが汚れているか破れているかという状態で、爪は割れ、前歯の二本が抜け落ちていた。

【見える貧困】立ちんぼ売春で生き延びる歌舞伎町の少女たち「3000円、ラスト」 
いうまでもなく、彼女たちはこの通りで自分たちを買ってくれる男性を待つ街娼、
いわゆる「立ちんぼ」だ。新宿・大久保界隈といえば、韓国系や東南アジア系の立ちんぼが
多くいることで知られていた界隈だが、2000年代中頃には日本人の立ちんぼが出没するようになった。
そんな怪しい界隈に、まだ高校を出たばかりの少女たちが現れるようになったのは、
この7〜8年のことだという。

「普段はイチゴーのホ別、一時間ラストまで。今日は腹減ってるし、
ご飯食べさせてくれるなら3000円でいい。寒いし、お風呂も入りたいしね」

筆者がそれとなく“取材”であることを告げ近くの中華料理店に入ると、リコは炒飯と牛肉と
野菜の炒め物、餃子に揚げ春巻きなどを一気に注文する。レモンチューハイのオーダーは、
私が下げさせた。外で引っ掛けた客とよく訪れるというこの中華料理店。
リコとは親しげに話す店主の老婆の視線は、私から意図的に外されているようだ。

「中学の途中から学校いかなくなって、定時制高校もほとんど行かずに中退。
キャバのバイトで知り合ったホストの家に転がり込んで、風俗のバイトやって……。
でもウチさ、当時未成年だったし歯もないじゃん(笑)。風俗の面接でも落とされっから、援交しかないよね、実際」

ご飯のつぶや野菜片を口からこぼしつつ、生い立ちを語るリコ。言動には悲壮感を全く感じさせないが、
この現代日本に、どこか遠くの貧困国家で暮らす“ストリートチルドレン”の
ような子供が存在することに戦慄を覚えた。リコの周りの大人たちの無関心、
リコを取り巻く社会が完全に機能不全に陥っているのではないか。

中華料理店を出た私は、リコに取材の謝礼として5000円を手渡し、その場を立ち去ろうとしたが……。

「そういうの、マジでムカつくんだけど! ヤリてーんだろ?  
いい人ぶってんなよ、死ねよ! 何が取材だよ、面白おかしく書くんだろ、クソが!」

取材なのでホテルまで行く必要はないし、買春する気もないと何度も説得するが、理性を失ったように
罵声を浴びせかけてくるリコ。やっとの事で解放された時、リコは私から2万円の
現金をむしり取っていった。