■許光俊 音楽評論家、慶応大学教授 ← バカ

もっとも悲劇的な、苦渋に満ちた交響曲を書いた人は誰か?
耳が聞こえず孤独に悩んだベートーヴェンだろうか。ペシミストだったチャイコフスキーか。
それとも、妻のことで悩んだマーラーか。死の不安に怯えていたショスタコーヴィチか。あるいは・・・。

もちろん世界中に存在するすべての交響曲を聴いたわけではないが、
知っている範囲でよいというなら、私の答は決まっている。
佐村河内守(さむらごうち まもる)の交響曲第1番である。

  −中略−

 その佐村河内が、自分の半生を綴った本を講談社から出した。その内容は、恐るべきものだ。
私は一気に読み終えたが、途中何度も暗然としてページを閉じたくなった。生きているだけでも
不思議なくらいの悲惨な状況に彼はいる。なのに、ものすごい執念で作曲を続けているのだ。

本に記されたその様子を読んで鳥肌が立たない者はいないだろう。そして、無理のあまり、
彼の指は動かなくなり、ピアノは弾けなくなり・・・というぐあいに肉体はますます蝕まれていくのだ。
ここで詳述はしないが、安易な同情など寄せ付けないほど厳しい人生である。

  −中略−

日本の若者を見てみればわかる。夢も希望もないのだ。いや、必要ないのだ。
救いを探し求める気持などないのだ。
日々を適当におもしろおかしく生きて行ければいいだけだ。

だが、佐村河内は違う。彼は地獄の中にいる。
だから、交響曲が必要なのだ。クラシックが必要なのだ。

http://www.hmv.co.jp/en/news/article/711060001



■新垣氏 談

「マーラーのコピーです」

「あの程度の楽曲だったら、現代音楽の勉強をしている者なら誰でもできる」