朝鮮半島の焼肉文化
李氏朝鮮の時代にすでに宮廷料理として精肉(枝肉)を用いた焼肉料理が存在したが、これは庶民の口に届くようなものではなかった。
李朝時代の焼肉は煖炉会と呼ばれソウル周辺の風習として記録されており、高級貴族が初冬の節会に屋外で楽しんでいたものである。
李朝末期の風土記である洪錫謨の『東国歳時記』(1849) にはレシピが記述されており、前処理としてタレに漬け込んだ肉を鉄なべで
野菜などと焼くもので、今日のプルコギないしはすき焼きに近い料理であった。肉の下処理など調味方法は独自のもので、内臓(ホルモン)は用いなかった。
日本でみられる「韓国風焼肉店」の品揃えのうち、韓国・朝鮮式のものの一部はこの宮廷料理の調理方法を応用したものであり、
前処理としてタレを揉み込み、あるいは漬け込むこの調理方法が次第に一般の焼肉店にも広がり採用されたものと考えられている。
一方で焼き上がりをタレにつけ食べさせるスタイルは大阪市の食道園が始めたものとされ、韓国ではこの食べ方は一般的ではない。
現在、朝鮮語において「焼肉」を意味する語は「コギグイ」(肉焼き)であるが、これは肉を焼いて調理する韓国料理の総称となっている。
コギグイの具体的なメニューとしては「プルコギ」(火肉)、「カルビグイ」(カルビ焼き)、「サムギョプサル」(三枚肉)等がある。
プルコギは日本のすき焼きに近い料理である。カルビグイやサムギョプサルは、後述する日本の焼肉(東洋料理)に近い料理であるが、
それ単体を供する外食店は一般でなく、韓国ではメニュー名の一つとなっている。また韓国では、ホルモンをメニューとして提供する焼肉店は一般的でない。
韓国における牛肉消費量は1980年代まで少なかったが、1988年のソウルオリンピック開催に伴って経済が発展したことで大きく増加した。
韓国の牛肉輸入自由化は2001年である。